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憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(10/20)

ゲキサカ / 2016年4月24日 7時30分

 結論が出たのは、3分後のことだった。中村の出場は予定どおりだったが、交代するのは遠藤保仁ではなく長友で、システムを再び4-2-3-1に戻すことになった。これにより、中村はトップ下に入ることになり、ボランチでプレーする機会は失われてしまったが、出場できるなら、そんなことはどうでもよかった。

 残り時間は約15分。チームメイトにジェスチャーで「4枚」と伝えた彼は、メキシコのゴールに向かって全力で駆けていった。

「自分のスタイルがまったく手も足も出ないという感触はなかったです」

 試合後の取材エリア、中村の言葉には力がこもっていた。

 日本はメキシコに敗れた。だが、中村の投入によってテンポよくボールが回るようになった日本は後半41分、岡崎慎司のゴールで一矢報いることに成功した。

 プレーメーカーである中村は、ボールに何度も触ることでリズムを作り、ゲームをコントロールするプレーヤーである。本来なら先発か、途中出場でも後半の頭から出場するときに、持ち味が最も発揮されるタイプと言える。

 少ない残り時間で試合の流れを劇的に変えるスーパーサブの役割を託すなら、わかりやすい武器を持ったストライカーか、敵陣を切り裂くドリブラーのほうが相応しい。

 だが、イタリア戦、メキシコ戦と2試合続けてリードを許した時間帯に投入され、自身の起用法に幅が生まれたことを中村は感じていた。

「みんな疲れていたから、自分がみんなの足にならなきゃいけないと思っていた。誰よりも走って受けて、さばいて出ていく。ムダ走りしてスペースを空け、守備で頑張る。途中出場の役割は整理できているから、あとは刻一刻と変わっていく状況に、いかに合わせられるか」

 中村との質疑応答は、なおも続いていた。

 その途中で囲みの輪から抜けた僕が別の選手の話を聞き終えた頃、中村への囲み取材も終わったようだった。中村はこちらのほうに歩いて来ると、そっと言った。

「今までなら出番のない状況だったからね。少しはアピールになったんじゃないかな」 

 何か吹っ切れたような表情で、中村はバスの待つ通用口へ、再び歩みを進めていった。

 だが、結果としてこのメキシコ戦が、彼にとってザックジャパンでの最後のゲームとなる。

 ブラジル、イタリア、メキシコとの真剣勝負に挑んだ日本のコンフェデレーションズカップは3戦全敗で幕を閉じた。世界の列強との間には、まだまだ小さくはない差が存在している。

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