[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:長いトンネルのその先に(成立学園・矢田部竜汰)
ゲキサカ / 2016年4月28日 10時2分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
関東大会の出場権を懸けた準決勝。成立学園高を率いる宮内聡監督は「ちょっと“賭け”でしたね」という采配を振るう。相手は1か月前のT1リーグで0-4と完敗を喫した関東一高。いつものスタイルで戦っても現時点では勝ち目がない。そんな状況で指揮官が語った“賭け”とは「高校の公式戦では今日初めてセンターバックをやりました」と自ら明かしてくれた矢田部竜汰のセンターバック起用。その矢田部はこの一戦に並々ならぬ決意で臨んでいた。
大津祐樹(柏)、戸島章(町田)、飯田涼(相模原)といった優秀なアタッカーを多く輩出するなど、その攻撃的なスタイルで東京の高校サッカー界を牽引している成立学園。「『ボールを動かすことなんか当たり前だよ』と。それは何のためにやるのかと言ったら『攻撃するためだよ。崩すためだよ』という練習をやっている」と語る宮内監督の信念に揺るぎはない。それでも、今回の試合ばかりは少し様相が違う。前述したように力の差を見せ付けられた関東一を念頭に置き、1週間準備してきたのは「ちょっと割り切って、ボールを奪うというよりもゴールを守ろう」(宮内監督)ということ。多少ブロックを敷いてでも、まずは失点をしないことを第一に考えたプランを立てる。その中で「去年まで試合に出ていた経験や、1対1でそう簡単にやられない部分」を評価して、指揮官はサイドバックを本職にしながら、ここ最近は定位置を失っていた矢田部をセンターバックに指名する。
外から見れば突然の指名だったが、実際には以前からセンターバックとしての起用もほのめかされていたという。本人も「小学校の頃からセンターバックをやっていましたし、中2の時からサイドバックになって、元々どっちもできるのが自分の“売り”だったので、センターバックと言われても緊張はしなかったですね」と頼もしい。実際に立ち上がりから落ち着いたプレーでゲームに入った矢田部は、14分に自分の持ち味だというピンポイントフィードで先制ゴールをアシストすると、2点をリードして折り返した後半は一方的に攻め込まれながらも、粘り強いディフェンスで最後まで相手に得点を許さず、2-0で完封勝利。「練習から成立のサッカーじゃないことも徹底してやってきたので、今日はこの試合がベストなんじゃないかなと思います。耐える時間も長かったですけど、みんなで一丸となってやれたので、それは良かったですね」と納得の80分間で、1か月前のリベンジと関東大会の出場権を同時に手にしてみせた。
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