憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(20/20)
ゲキサカ / 2016年5月19日 22時47分
川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。
表の顔と、裏の顔<下>
伊藤宏樹にとって忘れられないのは、2004年5月に行われたJ2第10節のコンサドーレ札幌戦である。
シーズンが開幕してもなお、ボランチのレギュラーは固定されていなかった。関塚隆は毎試合のようにダブルボランチの組み合わせを変えて、誰と誰を組ませるのがベストかを探っていた。候補は5人。鬼木達、久野智昭、山根巌、相馬直樹、そして中村憲剛である。
だが、そのコンサドーレ戦以降、ボランチのポジションのひとつは固定された。
2度目の先発出場となったこの試合で、左足の鮮やかなシュートを決めた中村が、指揮官の心をがっちりとつかんだからである。
「チャンスをモノにする様さまがあまりに強烈で、“なんだ、コイツ、凄いな”って。そこからチームの快進撃も始まって――」
チームの「ヘソ」にも「心臓」にもたとえられ、攻守をリンクさせるボランチが固定されたことで、チームの戦い方も自ずと定まった。いずれも長身だったため、のちに「川崎山脈」と呼ばれることになる伊藤、寺田周平、箕輪義信の3バックが文字どおり、敵の攻撃を跳ね返し、中村に操られたジュニーニョ、マルクス、我那覇和樹の強力攻撃陣が面白いようにゴールを重ね、チームも勝ち点を積み上げていく。
伊藤には、試合を重ねるたびに中村が成長し、自信を増幅させていく様子が手に取るように感じられた。だが、一方で、ボランチとしての中村に欠点がなかったわけではない。
「細かく言うと、ポジショニングとか、めちゃくちゃなんですよ。でも、言い過ぎると憲剛の良さが消えちゃうし、攻め残ってる憲剛がカウンターの起点になって、それがうちのサッカーになっていったから、周平さん、ミノさんと“大変だけど、俺らでカバーしてやろう、俺らでなんとか守りきろう”って話してました。周りに恵まれてたと思いますよ、憲剛は。あいつは、あのチームの末っ子。だから、あんなワガママに育っちゃって。フフフ」
2006年10月以降、中村は日本代表に選出されるようになる。中村の選出は、新たな楽しみを伊藤に与えてくれた。
「自分のことのように緊張したのかなあ……。でも、日本代表って、めちゃくちゃエリート集団ってイメージがあるから、あそこまで叩き上げの選手が堂々と渡り合っていたのは痛快だったし、楽しかったですよね。結局、自分は選ばれず、残念でしたけど、憲剛が夢を見せてくれたし、何より嬉しかった。代表戦を見るのが楽しかったのは間違いないですね」
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