[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:土のグラウンドから生まれる112人の一体感(都立東大和南高)
ゲキサカ / 2016年6月9日 8時42分
「自分たちの繋ぐサッカーをビビらずにちゃんとやっていたように見えました」と前半をベンチから見守っていた柿崎が話したように、ボールを大事に繋いでいくスタイルが一際目を引いた。てっきりチームの伝統的なものなのかと思い、住谷に問うと「“繋ぐ”というスタイルも結構自分たちのチームでは新しくて、入学した頃は結構蹴っているサッカーだったんですけど、繋ぎ始めたのは去年の終わりぐらいだったかなあ… キッカケもみんなで話し合ったのかな?… ちょっと記憶がビミョーなんですけど(笑)」となかなか要領を得ない。懸命に記憶の糸を辿ってくれた住谷には悪いが、逆に繋ぐスタイルに舵を切ったキッカケも時期も曖昧な中で、ここまでの完成度を誇っていること自体が大きな驚きだ。
都立東大和南高校はごくごく普通の都立校であり、当然校庭は土のグラウンド。しかも岸本曰く「土の中でもさらにグラウンドが悪いのでボコボコなんです」とのこと。そんな環境下でこのスタイルに磨きを掛けるべく、少しでも芝と同じような環境に近付けるように、学年もレギュラーかどうかも関係なく、みんなでグラウンド整備をしているという。「芝で練習しているチームに負けたくない気持ちはある?」と岸本に水を向けると、「芝でやりたいなというのは思っていますけど、別に芝でやっているチームに負けたくないみたいなことは考えていなかったですね。ウチは都立なので」と口にした後で、「土でボコボコだから、芝でやった時に『楽しい』みたいな感じもあると思います」とも続ける。目の前の環境を受け入れながら、自らのやるべきことに向き合える強さが都立東大和南には確かにあるようだ。
この時期の都立校ならではの悩みもチームにはある。受験を控えた3年生は、どの時期で高校サッカーから“引退”するかというのも大きなポイントだ。とりわけゲームになかなか絡むことのできない選手にとって、この高校総体は一つの区切りを付ける時期でもある。「応援に回ってくれているヤツらからも『絶対オレらを引退させるなよ』というのは毎日のように言われていて、そのプレッシャーもあるんですけどね」と苦笑した住谷も、「今は彼らの分も戦えているかなと思います」ときっぱり言い切り、スーパーサブでの起用が続いている柿崎は「“春引退組”の選手でベンチに入れていない人も多いので、その人たちも『少しでも長くみんなでやりたい』と絶対に思っているはずですし、そのためにも頑張らなくてはという気持ちがありました。応援団のみんなも『何で応援なんだよ』とかじゃなくて、自分たちで歌とかも考えてくれて、1人1人の応援歌もスタメンにはあって、進んでやってくれる人がいるので、自分たちのやるべきことをみんながちゃんとやっていると思います」とチームのまとまりを強調する。柿崎の話を聞いていて、引っ掛かったフレーズがあった。それは“春引退組”というもの。高校数の多い東京は高校総体の支部予選が4月に開幕することもあって、確かに“春”で高校サッカーに別れを告げる3年生も少なくない。今までの都立東大和南も例外ではなく、だから“春引退組”というフレーズが自然と使われているのだろう。
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