青赤10番から水戸を経て…看護助手との二束のわらじ、VONDS市原MF二瓶翼
ゲキサカ / 2016年8月28日 10時17分
[8.27 天皇杯1回戦 VONDS市原1-2東京V 味フィ西]
誰よりも楽しそうに90分間を戦っていた。倒れてもすぐに起き上がり、またボールを追う。かつて自分がいたJ2というカテゴリーの相手を前に、挑戦心に火がついた。終わってみればVONDS市原は東京ヴェルディに1-2で敗戦。天皇杯1回戦敗退となったものの、MF二瓶翼は意地の1点を決めるなど、爪痕を残した。
かつてFC東京U-18で10番を背負った二瓶。2013年には“高卒”で水戸ホーリーホックへ入団するも、契約満了により2シーズンで退団。2015年からは関東1部の市原に所属している。かつてはJリーガーとしての日々を過ごしていたが、今では看護助手とサッカー選手という二束のわらじを履く。
市原では毎日10時から練習を行い、昼食を食べた後に各々が仕事へ向かう。二瓶は13時半から約18時まで医療法人社団緑祐会・永野病院で看護助手として働いている。「自分の仕事は看護助手といって、介護士のような感じの仕事。トイレを介助したり、オムツを交換したり、お風呂に入れてあげたりしています」。
“社会人”として仕事を始めた当初は戸惑いもあったといい、「最初はにおいなどの抵抗もあったし、色々と衝撃でした」と素直に明かす。それでも「段々とおじいちゃんやおばあちゃんに愛着が沸いてきて。今ではオムツを替えるときは“しちゃったの~?”“早く替えようね~”という感じになってます」とやさしく微笑んだ。
サッカーだけに取り組む毎日から、約2年で立場は大きく変化した。それでも21歳のMFは「見据えているところは変わっていないので。どのカテゴリーにいても、自分を見失わずにサッカーと向き合うことが大事なことだと思う」と言う。
仕事をする時間ができたことで、よりピッチへいる時間を尊く感じ、サッカーへの愛情はより深くなった。当たり前だったサッカーだけをする日々に訪れた変化。それは自身がどれだけ、真摯にサッカーへ取り組めるかを問うものでもあった。自分を見失わない覚悟は二瓶を内側から強くした。
そして迎えた天皇杯。関東1部所属の市原は千葉代表としてJ2クラブと戦うことになった。かつて自身がいたカテゴリーのチームとの“再戦”。「カテゴリーは(東京Vが)遥かに上。僕らは失うものがなかったからチャレンジャー精神を忘れずにどんどんやろうと挑みました」。
試合前のロッカールーム。外から漏れ聞こえてきた選手紹介で市原の選手の名が呼ばれていくなか、二瓶のときだけブーイングが聞こえた。かつてFC東京U-18の一員として、青赤の10番を背負い、東京のライバルとしてピッチへ立っていたMFへ、東京Vサポーターからの“歓迎の声”だった。
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