[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:夢のはじまり(都立東大和南・岸本真輝)
ゲキサカ / 2016年11月8日 13時35分
ところが、続けて追加点を決めたストライカーに話を聞こうとしたタイミングで、キャプテンは戻ってきた。どうしても言いたいことがあったらしい。「今は本当に選手、スタッフ、マネージャー、応援してくれる人、すべての人が1つになって戦えているから、一体感がものすごく出ているから、ここまで来られているのかなと思います」。しかも結構良いことを口にする。「どうしてもこれだけ言いたかったんで」と言って、再び去っていくキャプテンを見送りながら、大原先生も「アイツはちょっと変わったヤツなんで」と苦笑する。「確かに変わってるけど、なんか面白いヤツだな」というのが彼の第一印象だった。
次に話を聞いたのは選手権予選の準々決勝。本当はその直前のリーグ戦にも足を運んだのだが、彼はメンバー外だった。理由は名誉のために伏せておく。その準々決勝はまさに死闘。1-1で迎えた後半35分にキャプテンのPKで東大和南が勝ち越したものの、2分後にやはりPKで追い付かれて延長戦へ。ここでも一度は東大和南がリードを奪いながら、相手にラストプレーで失点を許し、勝敗の行方はPK戦へ。最後はGKの活躍もあって、同校初の東京4強を手繰り寄せることに成功する。試合後。2度目の会話ということもあって、彼も前回より警戒心を解いてくれた感じはあったが、ゆっくり考えながら言葉を紡いでいく感じは変わらない。聞きたいことはあらかた聞き終わり、「ありがとう。次も頑張ってね」とICレコーダーのボタンをOFFにした直後、突然キャプテンは前触れもなく話し出した。
「この間と似ているな」と思いながら耳を傾ける。「今までテレビのインタビューとかを見ていて、『周りのおかげです』とか言っているのを聞いても『ホントかよ?』とか思っていたんですけど、今はそれが本当だったってよくわかります。チームメイトとかスタッフとかマネージャーとか、みんなに支えられてここまで来られているんだと思います」。また良いことを言い出した。その時、思った。「ああ、この子は言いたいことがちゃんとあるんだな」と。「それが自分の中で整理できた時に出てくるんだな」とも。また機会があれば、次はちゃんと彼が整理できるような時間を掛けて、話してみたいなと思ったことを記憶している。
憧れの“西が丘”で東大和南の快進撃は終焉を迎えた。全国優勝6度を誇る名門のカナリア軍団は力強く、前半は何とか無失点で耐え切ったが、後半にセットプレーで2点を奪われ、アディショナルタイムにもダメ押しゴールを許して、3年生は高校サッカーに別れを告げることになった。最後にどうしても彼の話を聞きたかった。ただ、一向にロッカールームから出てくる気配がない。次の試合が始まり、ハーフタイムになっても姿を現さない。その試合も終わり、半ば諦めていた時に、偶然にも会場の外で大原先生をお見掛けしたため、無理を承知で彼と話せるか聞いてみた所、連絡を受けた彼はわざわざ駆け付けてくれた。
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