[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:因縁(岡山・長澤徹監督)
ゲキサカ / 2016年12月6日 19時0分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
ピッチの中央から微動だにせず、喜びに沸く桜色の歓喜を見つめ続ける。「この光景を目に焼き付けておかなければいけない」。もちろん悔しい気持ちは十分過ぎるほどにあったが、一方で正々堂々と真っ向から戦えたという晴れやかな気持ちもあった。視線の先で胴上げが始まる。最後に残された昇格というたった1つの椅子を争い、お互いに知略を振り絞った相手の指揮官が宙に舞う。「最後に一番厄介な人に立ちはだかられたな」。長澤徹の頭の中には“一番厄介な人”との様々な想い出が駆け巡っていた。
出会いは97年まで遡る。当時東京ガスサッカー部の監督を務めていた大熊清と、本田技研工業サッカー部の主力選手として活躍していた長澤は、山形で開催されたJFLオールスターサッカーで、コーチとキャプテンとして同じチームで戦うことになる。「まだ若くて血気盛んだった」という長澤にとっては、この舞台がある意味で格好のチャンスに映った。突然監督室にいた大熊を訪ね、「オレを獲って下さい」という直談判を敢行する。既に自らの今後を思い描いていた長澤は、選手としてではなく、指導者として自分を獲得して欲しいと大熊に申し出たのだ。「今から考えると『オレ、何してたんだろうな』って思うよね」と苦笑しながらその時を思い出す長澤。すると、本田技研で3年間のコーチ生活を経た2001年、現在はファジアーノ岡山のGMとして辣腕を振るう鈴木徳彦と、東京ガス時代から数えれば7シーズン目の監督生活に入っていた大熊が、長澤をFC東京に招き入れる。大熊はその年限りで監督を退任することになるが、長澤にとって4年越しで実現したタッグは実に刺激に満ちた1年だった。
それから9年後。2人は再び同じ目標に向かい、小平のピッチに立っていた。2010年9月。J2降格の危機に瀕していたFC東京は、南アフリカの地で世界のベスト16に輝いたワールドカップを日本代表のコーチとして経験し、束の間の休息を得ていた大熊に監督として白羽の矢を立てる。古巣への復帰を決意した大熊が、クラブへ要求したのは当時FC東京U-15深川で監督を任されていた長澤のコーチ就任。濃厚な時間を共に過ごしてきた中学生への強い想いはあったが、最後は10年間に渡ってお世話になってきたFC東京というクラブを何とかしたいという使命感が勝った。ただ、一度狂った歯車は元に戻らず、チームは最終節で降格の憂き目を見ることとなる。それでもクラブは大熊と長澤のコンビに、1年でのJ1復帰を託す決断を下す。
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