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[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:大将の器(関西学院大学・成山一郎監督)

ゲキサカ / 2016年12月15日 0時48分

 迎えた2015年。関西選手権を制し、前年は4強まで勝ち上がった総理大臣杯で初優勝を勝ち獲った関西学院大は、勢いそのままに加茂の最終年度以来となる6年ぶりのリーグタイトルも獲得する。四冠達成を旗印に挑んだインカレも準々決勝で流通経済大に1年前のリベンジを果たすと、決勝では同じ関西で切磋琢磨してきた阪南大を下して、創部96年目にしてとうとう冬の全国王者へ辿り着いた。それでも、試合後の会見で成山は淡々と言葉を発していく。「『何で優勝できたのかな』と考えたんですけど、キャプテンをはじめ4回生が凄くチームを引っ張ってくれたということと、去年や一昨年やずっと代々卒業生たちが悔しい想いをしながらも、去年のインカレの決勝に連れてきてくれて、そこで1回経験できたというのが今年は大きかったんじゃないかなと思います」。学生に敬意を払う普段通りの指揮官がそこにはいた。

 思えば一昨年の準優勝時も、昨年の優勝時も、記者会見場での成山はまったく変わらなかった。もっと言えば、それがインカレの舞台であろうと、リーグ戦の1試合であろうと、成山の取材に対する姿勢はまったく変わらない。彼の「宜しくお願いします」で始まり、彼の「よろしいですか。どうもありがとうございました」で終わるのが常の囲み取材。その間、質問に対してシンプルな言葉で手短に、生真面目に返答していく。まるで何かで自分を律しているかのようなポーカーフェイスで。

 PK戦までもつれ込む壮絶な一戦で日本体育大に屈し、連覇を目指した関西学院大のインカレは準々決勝で幕を閉じた。試合後。いつも通り成山の「宜しくお願いします」で始まり、「よろしいですか。どうもありがとうございました」で終わった取材の囲みが解け、偶然2人になったタイミングで聞いてみた。「自分を律するって大変じゃないですか?」と。ほんの少しだけ笑顔を見せながら、成山は「これで勝てるんだったら、これで学生のアイツらに良い想いをさせられるんだったら全然苦じゃないですよ」と答える。表情の変化を見逃さず、「笑っている姿をあまり拝見したことがなかったので意外でした」と伝えると、「そうかもしれないですね。弱い所を見せちゃいけないとか、隙を見せちゃいけないとか、普段は張り詰めているかもしれないですね」と苦笑する。ほんの少しだけ本音が覗いたのかもしれない。

 関西学院大での指導は成山にとって人生の中心にある。何気なく「息抜きって何かされているんですか?」と尋ねると、即答された。「関学のサッカー部でいつもサッカーをやっていることに、そもそも何のストレスも感じていませんし、毎日楽しくて仕方ないんです。この大会もみんなとまとまれてやれて凄く良かったですし、公式戦が終わっちゃったのが寂しいなという感じですね。僕には息抜きとか本当にいらないんです」。よく見ると彼の眼は少し赤くなっていた。「良い想いをさせてやりたかった4回生とのお別れが寂しくて」、最後は涙をこらえきれなかったという。「甘さや隙を本当に見せない監督で、僕たちをサッカー選手としてだけでなく、一人の人間としても成長させてあげようというのが凄く伝わってきますし、指導もそういうことも含めて言っているんだなということが凄く多いので、本当に一人の大人として成長させてもらえた存在ですね」と成山について語ってくれたキャプテンの米原祐は、初めて見る指揮官の涙に自らもつられて泣いてしまったそうだ。「それぐらい僕らに対して熱い想いで接してくれていたんだなと感じて、凄く感謝しています」と米原は少し寂しげに言葉を残した。

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