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[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:自分の中の“おまもり”(新潟明訓高・田中健二監督)

ゲキサカ / 2016年12月22日 21時43分

 特に痛感しているのは「勝てば勝つほど出会いも増える」ということだ。「元々テレビで見ていた」星稜の河崎護監督や富山一の大塚一朗監督といった名将とも、プリンスリーグに主戦場を移したことで、日常的に対戦することができる。そして、昨年度はとうとう選手権で16年ぶりの全国切符を勝ち獲り、結果的に優勝した東福岡高相手に善戦する経験も得た。まだ少し不思議な感覚はあるそうだが、対戦した各校の先輩指導者たちと実際に会話を重ねていく中で「そういう先生方も苦労はされているし、最初から強かった訳ではない」ということも理解でき、サッカーだけではなく、人生そのものを学ぶ機会も格段に増えてきている。そんな刺激的な環境に身を置く中で、「今の年齢は色々な人と出会いたいと思いますけど、そのためには勝つしかないというのがスポーツなんですよね」と考えるようになった田中自身の意識も大きく変わってきている。

 阪南大高戦に敗れた直後。「去年はこんな舞台で指揮を執っていること自体、自分の中で『オレでいいのかな?』とか思っていたんですけど、それが新潟の弱さだと思ったんです。『やれるんだ』と自分で信じないと生徒たちも伸びないですし、臆病だった自分がこういう舞台を経験したことによって、今日もそうですけど強気で戦術を組めるようになったというのは大きいかなと。テレビの画面を見てああだこうだ言うのは簡単ですけど、私たち指導者もこの舞台に立たないと、この一発勝負独特の雰囲気はわからないですし、そういう所の駆け引きが冷静にできてきたのは、ちょっと自分の中でも想像を超えていますね。凄く幸せです。全国の中でもこんな経験ができる監督さんはそうそういないと思います」と語ってくれた田中は自身の成長を口にしつつ、「ずっと明訓にいたら自分はこの舞台にはいないだろうなと。絶対に県を制することもできなかったと思いますし、自分がサッカー部の顧問ではなかった時のことも含めてアプローチができているので、最初から明訓じゃなくて良かったなと思っています」と言い切った。きっと彼は自分の中の“おまもり”を年々増やしていっているに違いない。外側にあるそれは落とせばなくなってしまうが、内側にあるそれはどんな時でも自分を守ってくれるという安心感と自信を、彼にもたらし続けてくれるはずだ。

 年齢を重ねれば重ねる程、否が応でも現実が見えてくる。日々の生活に追われ、いつしか夢や希望との距離も離れてしまいがちだ。そう考えると田中が過ごしている毎日は眩しく、そして羨ましい。「大人になると意外に色々なことを知っちゃって、夢もだんだん小さくなっていっちゃったりしていくんですけど、僕は生徒と一緒にいることによって、また夢を追えるんですよ。やっぱりスポーツの良さというのはそこにあって、実は指導者が一番夢を見させてもらっているのかもしれないですね。自分1人だったらこんなモチベーションにはならないですから」。生徒と共に夢を追い続ける過程で、自分の中の“おまもり”を獲得し、また多くの人の中に “おまもり”を与えているであろう田中の指導者人生は、まだまだこれからが本番である。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務し、Jリーグ中継を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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