[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:遅れてきた“27番”のデビュー戦(関東一・小野凌弥)
ゲキサカ / 2016年12月31日 7時41分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
大勢の記者に囲まれた1年生GKから少し離れた所で、「今までベンチやスタンドから試合を見ていたので、自分があのピッチでやっていると思うとちょっと不思議な感じです」と27番は小さく笑う。後半からの出場ながらビッグセーブを連発し、一躍脚光を浴びる格好となった北村海チデイ。そんな彼同様にほとんどトップチームでの公式戦出場経験を持っていなかった27番の右サイドバック(SB)が、関東一高の選手権初勝利に大きく貢献した事実も見逃してはいけないだろう。
初めて挑む全国の舞台を目前に控え、関東一を率いる小野貴裕監督は悩んでいた。ここ最近右SBで起用してきた矢越隆晟が負傷離脱。左右のSBをこなせる佐藤大斗を右に回す構想も、左SB候補の根本佑がインフルエンザに罹ったことで頓挫する。もう1人のSB候補も捻挫で出場は難しく、3バックへのシステムチェンジも頭をよぎったが、そもそもワイドを任せられる選手がいなくなってしまったのだ。この苦しい台所事情の中で、指揮官の頭の中にある選手の存在が浮上する。その選手とは「元々はセンターバックの控えなんですけど、かなり良くなってきていたのはわかっていたので」という小野凌弥。かくして「SBは人生で初めて」という2年生に、“右SB”という白羽の矢は立てられた。
そもそも人生で初めてのSBにトライする上、今までトップチームでの公式戦出場は1試合もない。「若いのを使っちゃうのは全然怖くないというか、使っちゃう時にこっちが思い切ってやらないとダメなので」と決断した小野監督も豪胆だが、その指揮官と同じ名字を持つ17歳もなかなか肝が据わっていた。「一昨日の夜は色々なことを考えてまったく寝れなかったですけど、昨日はあっさりすぐ寝れちゃったんですよね」と楽しそうに笑う。さすがに試合直前は少し緊張していたものの、整列してピッチヘ入場する頃には「ここに来ちゃえばやるしかないので、本当に『やるぞ』という感じになっていた」そうだ。小野監督も「試合前の受け答えも目が“すっ飛んで”いなかったので、ちゃんと目が据わった状態で話せていました」と証言する。高校選手権の開幕戦という大舞台で、小野凌弥のトップチームデビュー戦が幕を開ける。
彼に与えられた任務は、「相手のキーマンと言われていた」と自ら説明する野洲の7番を背負った高取誠隆を抑えること。「ハイサイドにずっと張っているので、石島君とうまく連携を取りつつ、ボールを見ながらしっかり守備していました」と振り返った小野凌弥は「スーパー上手かったです」と苦笑しながら評した高取へ懸命に食らい付く。何度か剥がされるシーンはあったものの、小野監督も「僕から遠いサイドになってしまったので、その時だけが心配だった」前半で、「オープンに広げられた時に1対1の対応を見て、『ああ、今日は行ける日かな』と。あそこで離されなかったので良かったなと思います」と“右SB”の出来に一定の手応えを掴んでいた。
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