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[SEVENDAYS FOOTBALLDAY]:本当の人(岐阜・大木武)

ゲキサカ / 2017年4月19日 20時53分

 実はこの試合の中継で、こんな一コマがあった。試合終了後のこと。インタビュアーが「前から来る湘南に対して、岐阜の良さはどれくらい出せたとお考えでしょうか?」と尋ねると、「前から来てたんですかね?」と逆に質問した大木は、再び「来てないとお感じになっていましたか?」と聞くインタビュアーに「それは私にはわかりませんけど。はい」と返し、少しのやり取りがあって、インタビューは終了した。きっと大半の場合は、気になった点があってもあえて聞き返すことなく、いわゆる“大人の対応”でつつがなくその場を終わらせることの方が多いだろう。ただ、大木はそうはしなかった。端から見ると「インタビュアーがやり込められた」と映る向きもあったかもしれない。それが女性だったからなおさらに。それでも、そのインタビュアーは自分の実力にこそ悔しさを覚えたものの、今までにない感覚を味わったという。「ああやって聞き返された時、そんなことは初めてだったので、『これは面白いことが聞ける!』とゾクッとしたんです。『あそこでもっと違う聞き方をして、話を引き出せていたらなあ』って思います。手短でも“本当”のことを話してくださる方でしたから。次に大木監督にインタビューする機会があったら、『君、うまくなったな』と言わせてみたくなりました!」。短い時間の“真剣勝負”で、そのインタビュアーは大木に魅了されたようだ。実際に相対してみると、その感覚が理解できると思う。なぜならいつでも彼は、“本当”のことしか言おうとしないからだ。

 4月16日。前日の出来事について、どうしても感想を聞きたい人を山梨中銀スタジアムに訪ねた。大木がヴァンフォーレ甲府を率いていた時代に、クラブ広報として彼と長く濃厚な時間を共にしていたその方に、インタビュアーと大木のやり取りと、インタビュアーが抱いた心情を伝えると、笑ってこう話してくれた。「その話を聞いて『メッチャ大木さんらしいな』って(笑) 常にサッカーに向き合っている監督だし、はぐらかさないし、僕らもハッと気付かされることがいっぱいあって。でも、それがいつも凄く新鮮で、『らしいなあ』っていう。その子の気持ちもわかります。とってもよくわかる。でも、大木さんはもちろんまったく貶めようと思って言っていないし、絶対その子もそれが『えっ?』みたいな回答じゃないとわかるから、それに対して『よく見ておかなきゃいけないな』と思うだろうしね。そういう所は昔から変わらないな」。

 今シーズンの目標を問われた大木の答えは力強い。「『岐阜のイメージを変えたい』と。もちろん今までが悪い訳ではないけど、やはり岐阜のイメージとしたら、J2で、J3との入れ替え戦ぐらいにいるチームだという印象が皆さんには強いと思う。それをやっぱり変えたい、というよりも変える。それが今年1年の目標ですね」。ぶっきらぼうで、おしゃべり。理論派で、情熱家。いくつもの相反する魅力を内包した“本当”の人が、Jリーグの舞台に帰ってきた。


■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務し、Jリーグ中継を担当。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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