[MOM500]関西学院大MF加藤寛明(4年)_「チームのために闘う」4回生が“引退試合”で示した矜持
ゲキサカ / 2017年12月15日 9時51分
[11.25 第95回関西学生L後期第6節(延期分) 関西学院大2-0大阪経済大 J-GREEN堺]
前節で大阪体育大に敗れ、5年ぶりにインカレ出場権を逃した関西学院大にとっては、この大阪経済大戦が今シーズンのラストマッチ。4回生にとっては、「引退試合」となる。その大学最後の試合で初のスタメン出場を果たしたのが、MF加藤寛明(4年=桐光学園高)だ。
「最後に神様がご褒美をくれたのかな」と加藤本人は話したが、スタメン起用は去りゆく4回生へのはなむけではなく、自身の力で勝ち取ったものだ。中野克哉(3年=京都橘高)、山本悠樹(2年=草津東高)、難波圭輔(4年=市立西宮高)といった個性あるプレイヤーが、攻撃の主軸としてメンバーに名を連ねるため、ここまで途中出場にとどまっていた。
しかし、「大体大戦後、1週間のトレーニングで、攻守において積極的で最初から最後まで頑張りぬいていた」と練習での姿勢を高橋宏次郎ヘッドコーチに評価され、ラストゲームでスタメンを掴み取った。
「前半は固さもあった」と話した加藤だが、ボールを奪って前からプレスをかけ、はめていこうというチームの意図を良く理解し、右サイドで高尾瑠(3年=名古屋U18)とうまくコンビネーションを作りつつ相手を崩して攻撃を活性化。アシストこそつかなかったものの、先制点も御膳立てした。後半途中からはボランチのポジションに入ったが、競り合いで粘り強く泥臭く戦い、守備のポジションを戻して無失点勝利に貢献し、高橋ヘッドコーチの起用に応えた。
Iリーグでコツコツと力を着け、今年のチーム始動時にはAチームに昇格したが、春先にはBチーム行きを告げられた。「不満も、もうAチームには上がれないのかなという気持ちもあった」と落胆する加藤に、Bチーム早崎義晃コーチからの「4回生としてのプラスアルファを出せたら、チャンスをつかめるのではないか」という助言が支えとなった。練習で必死になり、一つひとつのプレーに懸けた。
夏に再びAチームへと戻ってきたのは、「チームにどう貢献するか、あいつなりの貢献の仕方を見つけて、一番闘っていた。そういう選手がAチームに必要だった」という「4回生としてのプラスアルファ」を高橋ヘッドコーチが認めたからに他ならない。
高校3年のときは、ラストゲームの高校選手権神奈川県予選でベンチメンバーに入れず、「スタンドで、チームメイトを心から応援できなかった」と精神的に未熟な部分があった選手が、大学に来て「Aチームではない最終学年の人たちが出られなくても手を抜かず応援も練習も一生懸命やる姿を見て、Iリーグを勝たせたい。周りのためにサッカーをしたい」という気持ちでサッカーに取り組むようになり、「人のためにやろうという気持ちが芽生えてからプレーも頑張れるようになった」と、逞しく成長した。
春からは製薬会社に就職し、サッカーとは離れることになる。「ラスト思いっきり疲れよう。右サイドやボランチは不慣れなポジションだけど、がむしゃらにやろう」とこの日も90分を走り抜いた。大学でもずっと、思うような選手生活だったわけではない。
だからこそ「応援をしてもらえるという幸せな気持ちを忘れず、応援してくれる人のために全力を尽くしたい」とチームメイトのために闘った4回生の想いは、勝利の笑顔とともに後輩たちへと届いているに違いない。
(取材・文 蟹江恭代)●第95回関西学生1部L特集
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