ブラインドサッカー日本代表・高田敏志監督の告白「僕がメダルを目指す本当の理由」
ゲキサカ / 2019年1月9日 7時0分
「トップチームの下のバイエルンBでプレーしていた子供みたいな選手がいたんですが、クラブ関係者がその子を指して『確実に出てくるよ』と言われた。それが2010年の南アフリカW杯で5得点をあげて、史上最年少の20歳で得点王に輝いたトーマス・ミュラーでした。そんなにうまいという感じはしなかったけど、得点をとる才能があったということ。それを見抜く感覚やロジックがヨーロッパには蓄積されているんです。同じことを知っていて、同じ環境にあれば日本だって勝てると思う。でもコーチの知識の量も質も違うと思いますし、当然、選手に教える内容が違ってきます。海外で勉強しなければ、という思いが必然的に強くなりました」
高田監督は、トップアスリートやコーチのマネジメント業務に関わる「株式会社アレナトーレ」の代表取締役でもある。スペインにもオフィスを構え、日本の指導者育成を目的に優秀な指導者を招く仕事もしており、ヨーロッパの最新情報を日々アップデートできる環境にある。
ベテラン黒田智成にイメージを持たせるため、背中に書いて指示を出す
ブラインドサッカーとの出会いは2013年1月。2012年のロンドンパラリンピックへの出場を逃し、次の五輪へむけ、GKの強化が課題となる中、専属コーチがいなかったため、関係者を通じて「練習を一度、見てほしい」といわれた。
「それまで競技を見たことがなかったんですが、当時は今ほどパスもつながらないのに、とにかく選手たちが楽しそうにやっていた。こういうサッカーあるんだなと感じました。仕事で会社経営をする中でいわゆる大人の汚い部分にも直面し、彼らの姿に心が洗われるような気がしたんです」
GKコーチとしてリオデジャネイロパラリンピックを目指し、2015年11月から代表監督に就任した。当時、身近に視覚障がいを抱えた人がいなかった高田監督は、全盲の選手たちとどう接してきたのか。
「あまり特別な先入観は持っていなくて、準備したことはないです。たとえばトイレに連れて行く方法も見様見真似で覚えました。彼らと付き合っていて思ったのは、彼らがやりたいのは、視覚障がい者向けのサッカーではなく、実は普通のサッカーをやりたいのではないか、ということです。ブラサカの選手は視覚を通してボールを把握できないので、足元のパス交換も、健常者がやるように簡単にはいかない。だから『スルーパスは無理だよね』という話になりますが、僕はいつも『まずやってみて、できることを増やせばいい』と考えています。『できない』という打ち消しの言葉は基本的に使わせないようにしているんです。最初は『監督、これ無理』と言っていたましたが、だんだんなくなってきましたね」
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