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発売即重版!!内田篤人の最新刊を無料立ち読み

ゲキサカ / 2019年4月8日 21時41分

発売即重版!!内田篤人の最新刊を無料立ち読み

 鹿島アントラーズのDF内田篤人が、ブンデスリーガのシャルケに移籍してから、今季主将に就任するまでの8年半を描いた『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(了戒美子著、講談社刊)が好評発売中だ。発売を記念して、書籍の一部を公開! 時の代表監督に直談判するという衝撃的"プロローグ"の全編をお届けする。

プロローグ

 ドイツの秋は気まぐれだ。晴れたと思えば冷たい雨が降り、うっすら汗ばむ日があったと思えば、信じられないような寒さに凍える。一進一退を繰り返しながら、ただ一つ確実なのは、間違いなく厳しい冬に向かっているということだ。日照時間は目に見えて短くなり、我々のような在独外国人の気を滅入らせる。冬の暗闇を楽しめるのは、ネイティブかドイツ生活の上級者だと思う。

 ベルリンにいる内田篤人から、あるテキストメッセージが入ったのは2017年10月のことだった。私はドイツ・デュッセルドルフに暮らし、ブンデスリーガなどを取材して執筆しているのだが、取材のない平日の午前中、原稿を書くため近所のカフェでパソコンに向かっている時だった。情報収集のためのネットサーフィンがあらぬ方向に向かいそうになり、キッカー誌かビルト紙のサイトに戻ろうとしていた時だったかもしれない。つまり、なんの変哲もないある日のことだった。

「今、ハリルさんと話したよ」

 スマートフォンの画面にはそんな文章が浮かび上がっていた。言うまでもないだろうが、ハリルさんとは、当時日本代表の監督を務めていたヴァヒド・ハリルホジッチのことだ。

 内田はロシア・ワールドカップ(W杯)に行くことを、18年5月にメンバーが発表されるまで、本気で狙っていた。この17年10月の時点では、当然ながらベンチ入りを含めた全23人ではなくて、スタメン11人に返り咲くことを目標に、というよりも心に決めて日々を過ごしていた。それでも、内田が日本代表として最後に試合に出場したのは15年3月。2度のW杯経験者とはいえ、日本代表から縁遠くなって長い時間が経っている。そんな元代表選手が、現・日本代表監督とコンタクトを取ったと言っている。

 通常、選手が監督と、個人的にコンタクトを取るのは特別なことだ。クラブチームにおいてさえ、選手が監督に連絡を取ったという話は、あまり聞いたことがない。よっぽどの相談事がある時に限られる。例えるなら、直接は一緒に仕事をしていない会社の上司に、業務外の時間帯に個人的に連絡を取るようなものだろうか。内田のさらっと爽やかなパブリックイメージや、それまで感じていた性格的なタイプからすると、ちょっと想像がつかない行動のように思えた。でも、そういえばその頃、「ハリルさんと話そうと思っているんだよね」と、ちょっとした雑談の中で話していた気もしてきた。だが、なぜだか私はさほど重く受け止めなかったのだと思う。だからとても驚いた。
  
 ただ、どう返事をすれば良いのか分からなかった。「えー、まじで?」と返すのは軽すぎる。かといって真面目に返して重くなるのはいやだ。

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