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「せがれの刺激になったかな」。アンプティサッカーで全国3連覇の立役者、新井誠治の生きがい

ゲキサカ / 2019年5月20日 18時20分

 新井と話した人はみんな自然と笑みに変わる。周囲を明るくする男はかつて、笑えない試練と向き合い、乗り越えてきた。

「30代でがんになりましてね。1年半ほど入院して寝たきりでした。足の中が腫瘍だらけになって、足を切って、それでも転移して。一時、ステージ4までいきました。僕は何とか一命をとりとめたんですけど、病室の仲間の中にはなくなっていく方もいまして……。当時せがれはまだ、保育園児だったかな」

 一家の大黒柱として、家族の未来を考えればおそろしい状況。心の中で泣いた日は数えられないほどあったはずだ。何が新井の支えになったのだろうか。

「親父として生きたいなと。せがれの物心つくまではね。せめて10歳ぐらいになるまで生き続けられればいいかな、と思っていたんです」

 目の前の試練をひとつひとつ越え、臍帯血移植も経て退院できるまで回復すると、かつて実業団選手として愛知県で優勝した元柔道家は、退院翌月から水泳をはじめた。陸上やアーチェリーにもトライし、体力が回復した後、損害保険会社に再就職を果たした。そんな時、義足屋さんで今のチームメートであるエンヒッキと偶然出会い、「アンプティサッカーを広めたい」という熱い思いを聞いた。「アンプティサッカー選手・新井」の誕生の瞬間だった。

「2年前にもMVPをいただいたんですが、今回は自分で決めた1点が優勝につながって前回とは違う喜びです。ただMVPは若い人にとってもらいたい、という気持ちもあるから複雑ですよ」

 かつてアンプティサッカーの日本代表でも活躍し、今は保険業務の仕事をしながら合間を縫って、日本アンプティサッカー協会の理事として普及、育成に奔走する。この日対戦した近藤や成長著しいチームメートの17歳、秋葉海人などに負けたくない思いもある半面、日本代表をさらに強くするために飛躍をとげてほしい彼らにMVPをとらせてあげたかった思いもある。人の幸せを第一に考えて生きてきた新井は、これからも熱い使命感を胸に走り続ける。

(取材・文 林健太郎)
●アンプティ/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら

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