ブラサカ日本代表の理学療法士がブラサカの現役選手を続ける理由
ゲキサカ / 2019年9月10日 7時0分
[9.8 東日本リーグ たまハッサーズ 3-0 ファンタス千葉SSC 松戸ウォーリアーズ](慶大・日吉グラウンド)
日本代表のストライカー黒田智成の2ゴールで開幕から好スタートを切った昨季王者のたまハッサーズに、晴眼者のフィールドプレーヤー(FP)がいる。背番号8で途中出場した阿部良平は普段、理学療法士として選手を支える日本代表スタッフだ。
「ブラインドサッカーは、学生時代の2007年からかかわりはじめました。最初はGKが足りなくて手伝ってくれないか、と頼まれてプレーしていましたが、2011年頃からFPもやるようになりました」
あまり知られていないが、国内の試合では晴眼者でもアイマスクをすれば出場することができる。「リーグ戦ではチームで1人以上、日本選手権とクラブ選手権は2人以上の視覚障がい者が出ないといけない」というルールに従えばいい。実際、目の調子が思わしくなく、将来全盲になることも視野に入れて、目が見えない世界を体感するためにプレーしている人もいる。
2012年から日本代表のコーチをつとめ、2016年、高田敏志監督のもとで理学療法士のスタッフになった阿部が明かす。
「たとえば、健常者がスピードに乗ったドリブルするとタイミングさえあえばそのままシュートに持ち込めます。でも視覚障がい者は、それが必ずしもうまくいかない。選手たちからもいろんな相談を受けて、どんなことに悩んでいるのか、という感覚を何とか理解したいと思い、(競技に)本格的に取り組みはじめました。最初は怖かったんです。ピッチ上に限っては、その恐怖心はだんだんなくなっていますが、ピッチを離れ、目をつぶったまま外を歩けるかといったら全然……。怖くて歩けたものではありません」
8月下旬、佐々木ロベルト泉に肩を貸し、イングランド遠征にむかった阿部良平
全盲の日本代表戦士は普段、トイレに行くことひとつをとっても、他人の助けが必要になる場合もあるが、ひとたびピッチに入ると、常人では考えられないほど素早く人やボール、ゴールの位置を察知し、無駄なく走り回る。阿部には、敬意にも似た感情が沸き上がっている。
「たとえば、僕たちが思っている以上に、選手たちが目指すサッカーは、より健常者のサッカーに近いものかもしれない。見えている僕らが『見えていない人はきっとこう感じるだろう』といった限界点より、今の代表選手たちはもっと先にいる感じがしています。(全盲ではない)私は日本代表にはなれません。でもその分、選手たちに立ちはだかれるくらいの選手になりたいんです」
彼らの凄さを世の中に広く伝えるためにも、メダル獲得という同じ目標に向かって一緒に走り続ける。
(取材・文 林健太郎)
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