[MOM3758]関東一FW坂井航太(3年)_歓喜。絶望。再び歓喜。劇的同点弾とPK失敗を味わったストライカーの揺れた感情
ゲキサカ / 2022年1月5日 9時19分
その場に崩れ落ちた坂井へ、笠島がすぐさま駆け寄る。「PKを外してしまった時に、感情が良く分からなくなってしまって、それでも李月が『オレがいるから大丈夫』と声を掛けてくれたので、そこでチームのみんなに任せるしかないという気持ちになりました」。祈る。とにかく、祈る。
5人目のキッカーはDF池田健人(3年)。赤い腕章を巻いたキャプテンのキックは、力強くゴールネットを揺らす。信じられないような“逆転劇”。その瞬間。スタンドへと走り出したチームメイトたちとは対照的に、坂井は1人だけセンターサークルの中でうずくまりながら、仲間への感謝を噛み締めていた。
期待に応えられない自分が、もどかしかった。新チームの立ち上げ時からストライカーとしての役割を担うと目されていたが、負傷もあって定位置をつかみ切れず、選手権予選は出場すらしていない。その間に後輩のFW本間凜(2年)が台頭。悔しさを抱えながら、それでも日々のトレーニングと真摯に向き合ってきた。
「選手権の全国の舞台でピッチに立って、こうしてチームを救うゴールって言っていいのかわからないですけど(笑)、ゴールを決められたので、そこは素直に嬉しい気持ちが大きいです」。PKこそ外したとはいえ、あの同点弾がなければ、その状況が訪れることもなかったのだ。本人は笑いながらそう振り返ったが、もちろん『チームを救うゴール』と誇っていい。
次は準決勝。日本サッカーの聖地、国立競技場へ堂々と舞い戻る。開幕戦のピッチでも華麗なボレーでゴールを挙げていた坂井は、改めて立つ夢舞台へと想いを馳せる。
「自分は開幕戦でもゴールを決めることができたんですけど、準決勝で決めるゴールというのは、また開幕戦とは違うと思うので、まずはチームとしての勝利を第一優先にした上で、自分のゴールでチームを勝たせられたらいいなと思っています。開幕戦も観客は入っていたんですけど、あそこの観客席がもしも満員になるとしたら、想像しただけでもちょっと震えるというか、楽しみな部分で、昂る気持ちがあるんですけど、やっぱり決勝の舞台に行きたいですし、絶対に勝ちたいと思っています」。
1月8日。国立競技場。綺麗な緑の芝生が、歓喜と絶望と、さらなる歓喜を経て、一回り大きくなった坂井の帰還を待ち侘びている。
(取材・文 土屋雅史)
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