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力強く引き寄せた選手権日本一とシーズン3冠。青森山田が辿った“伝説のチーム”への軌跡

ゲキサカ / 2022年1月10日 19時35分

 ただ、一部の主力を欠いた中でのこの2試合は、チームへ新たな気付きをもたらした。「逆にあの試合が凄く良かったというか、選手が欠けることの重要性も認識できたし、その時に攻撃のパターンを失ってしまうことも見えたし、その分サブの選手が凄く成長する機会もあったので、そこは逆にポジティブに捉えながら、いい感じにチームが強化できてきたのかなと」(黒田監督)。悔しい経験は、結果的にチームの総和をさらに大きなものへと成長させた。

 8月。青森山田は追い込まれていた。5試合28得点という凄まじい得点力を発揮し、勝ち上がったインターハイの決勝。前半にPKで先制を許すと、米子北高(鳥取)の守備を崩せず、無得点のままで時計の針だけが進み続ける。それでも、後半終了間際にDF丸山大和(3年)が同点弾を叩き込むと、延長後半アディショナルタイムに再び丸山が決勝ゴール。奇跡的な逆転劇で日本一の座を堂々と手にしてみせる。

 試合後に人目も憚らず号泣した松木は、改めてこの経験をこう振り返る。「優勝してみて、仲間の大切さだったり、青森でも残ってずっと応援してくれたコーチの方々だったりチームメイトもいるので、その人たちにもしっかり感謝したいなと。チームで、山田の全員で勝ち切った勝利かなと思います」。苦労して、ようやく辿り着いた頂の光景は、とにかく最高だった。

 11月。チームに衝撃が走る。ともに不動のレギュラーだった、右SB大戸太陽(3年)と左SB多久島良紀(2年)が相次いで負傷離脱。守備の主力選手を失うと、リーグ首位攻防戦の大一番だった清水エスパルスユース戦にも0-2と敗戦。リーグ優勝、そして選手権に向けても暗雲が立ち込める。

 ここで奮起したのはMF小野暉(3年)とDF中山竜之介(2年)だ。小野は左SB、中山は右SBと、どちらも本職ではないポジションと懸命に向き合い、1試合ごとに目覚ましい成長を遂げていく。「自分も中山も別にあの2人と同じことをするわけではないので、自分たちの色を出して、チームにどう貢献できるかを考えてプレーしています」と小野。2人の“代役”以上の活躍もあり、プレミアリーグEAST制覇も達成。アウェイで決めた優勝の記念写真には、チームに帯同した大戸も多久島も笑顔で収まる。今まで以上の一体感を纏い、3冠のラストピースとなる最後のタイトルを目指して、選手権へと歩を進める。

 12月と1月。本来のパフォーマンスは影を潜めた。日本一だけを狙って乗り込んだ選手権。勝利は重ねたものの、ここまでのシーズンで貫いてきた『青森山田らしいサッカー』は、なかなか披露できない。もちろんどのチームも、絶対王者を倒さんと全力でぶつかってくる。加えて圧し掛かる偉業達成へのプレッシャー。知らず知らずのうちに、彼らは自分たちが1年間を掛けて築き上げてきたスタイルを見失いつつあった。

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