手堅いゲーム運びは「試合から学ぶ」経験を積み重ねてきた“のびしろ”の証。前橋育英は健大高崎を撃破して県3連覇達成!:群馬
ゲキサカ / 2023年11月13日 21時21分
今大会の前橋育英にとって、キーゲームとなったのは準決勝の桐生一高戦。前半のうちにミス絡みで2点を献上したものの、追い詰められた後半終盤に1年生の大岡が同点ゴールを叩き出すと、最後は延長戦の末に途中出場のFW織茂誠太郎(3年)が決勝ゴール。大逆転勝利を収めて、何とかファイナルへと勝ち上がってきた。
その苦闘がこの日にもたらした影響を、キャプテンの雨野はこう説明する。「先週は入りのところで自分たちのミスから失点したので、今週はその経験を生かして、『入りのミスをなくしていこう』とは話していましたし、2-0になった時も、先週は0-2からこっちが逆転したという経験もあるので、もう1回守備陣が引き締めてやれたと思います」。
去年の高校選手権で全国大会に臨んだ30人のメンバーに入っていた選手は、今年のチームに4人しか残っていない。その中でもピッチに立ったのはGKの雨野のみ。文字通りの“新チーム”として立ち上がった2023年は、最初の公式戦となった新人戦の準決勝で桐生一に完敗したところからスタートした。
プレミアリーグEASTの開幕戦も、スタメンの半分以上がプレミアデビュー戦という状況の中で、前年王者の川崎フロンターレU-18に0-3と成すすべなく敗れ、試合後には少なくない選手が放心状態に陥っていたことも印象深い。
それでも、試合は次から次へとやってくる。プレミアリーグで強豪相手に高い強度の実戦を積み重ねていく中で、ほとんど経験値のなかった選手たちはそのレベルにアジャストしようと、本当に一歩ずつ、一歩ずつ、前進していく。
連覇を狙ったインターハイは3回戦で同じプレミア勢の尚志高と対峙。結果的には0-1で敗れたものの、そのハイレベルな攻防に会場の観衆は驚嘆のため息の連続。試合後に雨野は「本当に伸びしろがある代だとは思っていて、ここまでも本当に攻撃も守備も伸びてきたと思います」と語るなど、真夏の旭川で成長の一端を逞しく披露した。
前述した準決勝の桐生一戦を潜り抜けたことも含めて、雨野は今のチームについてこう言及している。「いろいろな1試合1試合を経験していることが大きいと思いますし、『試合から学ぶ』ということができるのが、今年の強みかなと思います。今日も難しい流れでしたけど、こういう中でも勝ち切れるチームになってきたと感じているので、全国でもそういうところを出していければいいかなと思います」。
辿り着いた冬の全国大会。ほとんどの選手にとって未経験のステージだが、今の彼らであれば、その未知なる領域へ挑むことにだって、きっと心を躍らせているに違いない。最初で最後の晴れ舞台に向けて、斎藤は力強く言い切った。「全国、楽しみですね。その前にプレミアを勝ち切らないといけないですけど、全国で早く自分を試したいと思っています」。
この黄色と黒のユニフォームを着ているからには、負けることなんて許されない。試合から学び、地道に成長を続けてきた上州のタイガー軍団は、全国の相手と対峙する瞬間に向けて、まだまだ“のびしろ”という名の牙を研ぎ続ける。2023年の前橋育英が狙うのは、2年続けて阻まれているベスト8の壁を超え、その先に待っている国立競技場の表彰台だけだ。
(取材・文 土屋雅史)●第102回全国高校サッカー選手権特集
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