土壇場で同点被弾…名門帝京の沈滞ムード変えた主将・砂押大翔の一声「全員で笑え」ボール奪取でも決勝弾起点に
ゲキサカ / 2024年12月28日 19時41分
[12.28 選手権開幕戦 帝京高 2-1 京都橘高 国立]
開幕戦の勝利が近づく中で、後半33分に喫した同点被弾。聖地・国立競技場特有の「ここから何かが起きる」という雰囲気も含め、本来であれば雰囲気が沈みかねないシチュエーションだったが、即席の円陣を組んだ帝京高はMF砂押大翔主将(3年=鹿島アントラーズノルテJrユース)の一声が沈滞ムードを一変させた。
「(失点して)自分もマジか……みたいになったけど、そこで砂押くんがみんなを集めて『笑え、笑え』って。『笑顔でやれって』言ってくれて正気を取り戻せた。そのおかげで『まだ7分もあるし行けるだろ』と思って、しっかり切り替えられました」(FW宮本周征=2年)
失点に意気消沈しなかった帝京は、宮本がわずか2分後の後半35分に勝ち越しゴール。チームの雰囲気を立て直したキャプテンは、次のように声掛けの意味を明かした。
「みんな顔が下がっていたので、全員で笑えってことを意識して言っていました。とにかく下を向く時間をなるべく減らすために、点を取りに行くことよりも自分たちのサッカーをするということを意識して話をしていました」(砂押)
失点後の声掛けであれば「取り返すぞ!」といった直接的なメッセージを発することもできたはず。しかし、今季の帝京にとっては「笑う」という行為が、チーム本来の姿を取り戻すために何より必要な雰囲気作りだった。
「点を決められた時はみんなが一回集まって、笑顔をもう一回取り戻そうという話をこの1年間ずっとしてきたので」(砂押)。国立の大舞台でも普段どおりに——。そうした立ち返るべき原点に戻る一声が電光石火の勝ち越しゴールを導いた。
また砂押自身は声だけでなく、プレーでも勝ち越しゴールに大きく関わった。中盤センターサークル内で相手に激しく身体を寄せ、ボールを奪ったところから、振り向きざまに浮き球のパスを配球。これをFW森田晃(3年)が収めたことで、宮本のフィニッシュにつながっていた。
ボールを奪い切る技術、苦しい時間でも相手に寄せ切る胆力が際立った“起点の働き”。砂押は「相手のタッチが大きくなった時に自分の間合いに入ったなと思って、思い切り奪いに行くだけだった。キツいのはみんな同じ状況の中、そこで何で違いを出せるかが鍵。自分はそこでチームで誰よりも走ることを意識してやっているので、そういうところがつながったんじゃないかなと思う」と胸を張った。
そうして掴んだ国立競技場での白星。15年ぶりの全国出場を果たした帝京高としては、17年ぶりの選手権1勝となった。「国立に愛される帝京というものを目指している中、今日この国立という舞台で一つ勝ちを得られたことは本当に良かった」(砂押)。しかし、国立での物語はここで終わりではない。次のミッションは四半世紀ぶりの“国立準決勝”。砂押は「準決勝、決勝であと2試合できるチャンスがあるので、死ぬ気で戻ってきたい」と新たなモチベーションを燃やし、今大会の躍進を誓った。
(取材・文 竹内達也)
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