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再び巻かれたキャプテンマーク…8分で終わった選手権は「最高の舞台だった」山梨学院主将・山田逞人の涙

ゲキサカ / 2025年1月1日 11時24分

山梨学院高MF山田逞人(3年)がMF根岸真(3年)から腕章を受け取る(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.29 選手権1回戦 山梨学院高 1-2 滝川二高 ニッパツ]

 たった8分の選手権だった。2か月前の骨折から復帰した山梨学院高キャプテンMF山田逞人(3年)は後半37分から出場。短い時間しかピッチに立つことはできなかったが、「やっぱり最高の舞台だった。だからこそもっと上に行きたかったという気持ちが強い」と涙を流した。

 待望の復帰戦が選手権の舞台だった。「しっかりチームをまとめて勝ってこいと言われた」(山田)。1-1で迎えた後半37分に選手権のピッチを踏む。これまでチームを引っ張ってきた副キャプテンMF根岸真(3年)から腕章を受け取った。

 岩永将監督は采配を語る。「ゴール前のところでコンビネーションを発揮できる選手。そういったところでもう一個アクセントを出してくれればと思って、前目のボランチとして出てもらった」。攻勢に出るための出場だったが、その直後に思わぬ展開となる。

 山梨学院はサイドから滝川二高MF松元大智(3年)に突破され、自陣PA内に入られる。守備陣が対応するが、松元を倒したとみなされて判定はファウル。終盤でPKを献上し、MF三宅蔵ノ助(3年)に先制点を決められた。

 残りわずかのところで劣勢に陥った山梨学院は、1点を取り返すことができない。後半アディショナルタイム5分過ぎ、左サイドからクロスが上がると、PA手前から山田が鋭いボレーシュートを放つが、わずかにゴール左外に外れた。無情にも主審が試合終了の笛を鳴らす。山田はその場に崩れ落ち、涙を流した。

「惜しいだけじゃダメだと、決めないと、決めてこそなんぼだと思う。あれは自分の力不足だった」。そう語る山田は仲間に謝罪。「だからこそ自分が出て結果を出せなかったことが本当に悔しい。情けない気持ちでいっぱい」と口にした。

 10月19日、山梨学院の県予選初戦となった3回戦・青洲戦当日の午前練習中に第5中足骨を骨折。キャプテンは県予選を松葉づえ姿で見守ることになった。その姿を見た仲間たちは「逞人のために全国に行く」を合言葉にして奮闘。県予選決勝ではFW小河原瑛太(3年)がゴールを決めた後、ピッチ外にいる山田のもとに走り、熱く抱擁した。

 小河原はキャプテンの苦悩を知る。「逞人ががんばっていたことはずっと見ていたので」。選手権での共演は8分。それでも「同じピッチに最後に立つことができてすごくうれしかった」と目を赤くしながら笑顔を見せた。

 岩永監督はキャプテンの奮闘をねぎらう。「間に合うか間に合わないかもギリギリだった。本当に、彼の思いが怪我の治りも早くした。このピッチに立つまでにコンディションを上げてきたので、そこは彼の努力、人間性がいろんな力を貸してくれたんじゃないかな」。誰一人として、長い時間ピッチを不在にしたキャプテンを責める人間はいなかった。

 山田は1年次の景色を思い出す。「濃かったけどやっぱり一瞬で終わっちゃった。つい最近まで2年前の選手権だったような感じなのに……もう自分たちの引退だとは信じられない」。充実の3年間と、悔しい怪我と、待ち望んだ選手権からの唐突な敗戦。濃度の高い高校生活を、深いため息とともに振り返っていた。

(取材・文 石川祐介)
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