「2回のチャンス」を生かせずにすり抜けていった全国初出場初勝利。寒川は新たに突き付けられた未来への宿題を「乗り越える」
ゲキサカ / 2024年12月30日 19時27分
40+1分。少ないシュートシーンでも、かなりの確率で基点になっていたロングスローを、右から稲谷が投げ込むと、こぼれ球を途中出場のDF藤原康騎(2年)がプッシュ。ボールはゴールネットへ吸い込まれていく。「僕たちは負けていても前に、前に進んでいけるチーム。点を獲られても『逆転するぞ』という強い気持ちがあったので、追い付けたんだと思います」(伊藤)。
起死回生。土壇場からの生還劇。2回戦への進出権はPK戦で争われることになる。
「寒川さんもPKはかなり練習されているなという印象でした」と札幌大谷の清水隆行監督が話せば、「寒川さんもキッカーはみんな凄く上手でした」とは札幌大谷の守護神を任されているGK高路地琉葦。お互いに一歩も譲らない壮絶なPK戦が繰り広げられていく。
キッカーの順番はキャプテンが決めたそうだ。「『勝ちたい気持ちがあるヤツから行こうか』ということで、最終的には伊藤が順番を決めました」(岡田監督)「誰を選んでもいい中で自分がキッカーを選ばせてもらって、本当に幸せでしたし、自信を持って送り出すことができました」(伊藤)。寒川の円陣が解け、11メートルの戦いがスタートする。
「これまでの3年間を噛み締めながらPK戦をできたので、本当に気持ち良かったです。ちょっとさすがに長いなと思いましたけど(笑)」。伊藤がそう笑ったPK戦は、お互いのキッカーに1本のミスもなく、成功を続けていく。7人目までは全員がきっちり沈めた中で、先攻だった札幌大谷8人目のキックは枠外へ。寒川に絶好の勝機が訪れたものの、相手と歩調を合わせるかのように、8人目のキックはこちらも枠を外れてしまう。
札幌大谷12人目のキックは、守護神の谷山が完璧なセーブ。しかし、寒川12人目のキックはクロスバーの上に消える。2度訪れた『決めれば終わり』のPKを決め切れなかったチームに、勝利の女神は微笑まなかった。先攻の札幌大谷が成功して、迎えた寒川14人目のキックは左ポストを直撃。ほとんど掴みかけていた全国初勝利は、その手からするりとこぼれ落ちた。
「『よく頑張った』と言いました。廣畑は泣き崩れていましたけど、廣畑がいなかったらここまで来れていないので、ありがとうということは伝えたいですね」と岡田監督が語れば、「今までやるべきことをやってきたので、後悔はありません。最後は廣畑が外しましたけど、アイツがいなかったらここまで来れていないので、ありがとうという想いですね」とは伊藤。指揮官とキャプテンが同じようなフレーズを口にするあたりに、このチームの雰囲気が垣間見える。
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