15年ぶりに選手権へ帰ってきたカナリア軍団が残した確かな爪痕。「2024年の帝京」が築き上げた指揮官と選手たちのフラットな絆
ゲキサカ / 2025年1月4日 7時47分
1年時の冬に川崎フロンターレU-18から帝京へと転籍し、コーチ時代から2年間にわたって藤倉監督の指導を仰いできたDF田所莉旺(3年)は、その人間性の部分に感銘を受けたという。
「藤倉先生は今まで会ってきた指導者の人たちの中でもちょっと特殊というか、伝え方が感情的ではないので、自分には逆に響いていますね。『応援されるチームや人間になりなさい』ということを年の初めに言われましたし、サッカーノートを書いているんですけど、藤倉先生の言葉だけで埋まっちゃうみたいな。監督というよりは、本当に先生という感じですし、『試されてるのかな?』と思うこともよくあって、自分はそこでモチベーションを上げてもらえているのかなと思っています」。
PK戦のキッカーは選手たちが決めたそうだ。「基本的にPKの順番は選手が自分たちで決めているので、蹴りたい子が堂々と蹴ったという形ですね。この素晴らしいピッチの中で、自分たちの良さはきちんと出せていましたし、それがちゃんと結果にも繋がりましたし、PKで勝ち上がりの勝敗は決まりましたけど、あそこで追い付けたゴールは、この大会を象徴するような場面だったと思います」。指揮官は選手たちを称える。全国8強には、あと一歩及ばなかった。
おそらく藤倉監督は、特別なことをしているような感覚は持ち合わせていない。選手が自主性を持つための促し方について問われても、やはりフラットな答えを残している。
「今どきはそういう子たちが多くなってきたというか、主体的にやることも私たちが特別なことをやっているわけではなくて、自分たちでそういう判断をすることが当たり前のようになってきているだけで、別にこっちが仕掛けたわけではないので、そういうチームに彼らが自分たちでなっていったのだと思います」。
実に幸せなマッチングだったのではないだろうか。選手たちの人間的な成長を一番に考える指揮官と、そのスタンスへポジティブに呼応し、結果という形で指揮官の想いに応えた選手たち。長い間閉ざされていた冬の全国へと続く扉をこじ開け、カナリア軍団の止まっていた時計の針を動かしたのが、『2024年の帝京』であったのは、きっと必然だった。
(取材・文 土屋雅史)
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