選手権では2大会、全8試合にスタメン出場の堀越が誇る羅針盤。MF渡辺隼大が持ち続けた「出ていない選手の分まで戦う責任と覚悟」
ゲキサカ / 2025年1月6日 8時5分
[1.4 選手権準々決勝 前橋育英高 1-0 堀越高 フクアリ]
どんな試合でも、紫色のユニフォームを纏って、ピッチに立ち続けてきた。ボールを動かし、相手のキーマンを潰し、仲間がプレーしやすいように、陰から支える。うまく行く時も、うまく行かない時も、チームに1本の太い軸を通すのは、いつだってこの司令塔だった。
「こうやって2年間を通してしっかり試合に出続けられたのは、とにかく仲間の存在が大きかったですし、家族のサポートだったり、監督やコーチのおかげでもあるので、本当に感謝したいと思っています」。
堀越高(東京A)がここ2大会で戦った選手権の全8試合をピッチで経験してきた、絶対的なプレーメイカー。MF渡辺隼大(3年=三菱養和SC調布ジュニアユース出身)が身体の中に備えた羅針盤は、常にチームを正しい方向へ導いてきた。
再び国立競技場へと帰還するための最終関門。準々決勝で対峙するのは前橋育英高(群馬)。この日もスタメンリストには、当然のように渡辺の名前が書き込まれる。
「本当に小さいころから憧れていた大会で、自分も選手権で活躍している堀越を見て、『あそこに立ちたいな』とずっと思っていましたけど、まさか2回も出られるとは正直思っていなかったですね」。
全国4強まで駆け上がった昨年度の選手権でも、2年生アンカーとして定位置を確保し、準決勝までの5試合にフル出場。正確な中長距離のパスと、的確なポジショニングを生かして、中盤の底でチームを操り、堀越の躍進を下支えした。
そもそもここ2シーズンで欠場した公式戦は「たぶん片手で数えるぐらい」。選手たち主導でメンバー選考を進める“ボトムアップ方式”のチームで試合に出ているからこそ、「出ていない選手の分まで戦う責任と覚悟」を持って、目の前のピッチを駆け回ってきた。
立ち上がりからやや前橋育英に主導権を握られながらも、渡辺に焦りの色はない。ボールを握れないなら、まずは守備。相手のアタッカーたちを監視しつつ、シビアなゾーンに入ってきた選手にはタイトに寄せて、ボールを奪う。劣勢時の戦い方も、この2年でしっかりと頭に叩き込んできた。
後半に入ると、先にスコアを動かされる。ビハインドを負った展開の中で、渡辺も少しずつ高い位置を取りながら、攻撃への比重を高めていくものの、前橋育英の堅陣は揺るがない。
ファイナルスコアは0-1。2024年の堀越が続けてきた進撃は、全国のクォーターファイナルで幕を閉じる。「自分の力不足を感じましたし、自分がもっとやれればなと思いましたね」。悔しさと、不甲斐なさと、寂しさが押し寄せてくる。渡辺もあふれる涙を抑え切れなかった。
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