南雄太GKコーチのアドバイスも胸に腐らなかった守護神の復活劇。GK加藤慶太が流経大柏のゴールマウスを任される意味

「試合に出られない時の慶太の振る舞いを『どういう感じになるのかな』と思って見ていたんですけど、負の感情を一切出さないというか、より自分の課題に真剣に向き合っている姿を見て、『こういう選手だったら、もう1回チャンスが来るかもな』と思いましたね。それって高校生にとっては意外と簡単なようで難しいことで、慶太もほとんど負けてないのに代えられているわけで、内心は面白くなかったと思うんですけど、ものすごくチームのためにやっていましたし、課題と向き合っていましたし、そのあたりは凄く評価していました」(南コーチ)

　選手権予選の中断に入る直前の、横浜FCユースと激突するプレミアのホームゲーム。8試合ぶりのスタメンを勝ち獲った加藤は、結果的にリーグ制覇を成し遂げる相手に好パフォーマンスを披露し、チームも2-0で快勝。そこからは1試合も欠かすことなく、公式戦を戦う流経大柏のゴールマウスに立ち続けてきた。

「横浜FCとの試合に出させてもらった時に、そこで結果を出せたというのが自分の中で大きかったと思っていますし、腐らずにやることは自分も意識してやってきたので、それをこの選手権に繋げられたのは良かったなと思います」(加藤)

「僕が機会を与えたわけでも何でもなく、結局やっているヤツが最後に出るんです。それを体現しているのが慶太で、レギュラーで出ていたのに、試合に出られなくなった時に、アイツがどういう振る舞いをしていたかは、みんな一緒に練習しているから見ているわけじゃないですか。だから、『こんなに良いお手本がいるんだから、これを生かさないといけないよ』ということは、キーパー全員の前で言ったことがありますね。最後は慶太が自分で掴んだんですよ」(南コーチ)

流経大柏のベンチに座る南雄太GKコーチ(左から3人目)

　今大会でも準々決勝までの3試合にフル出場を果たしてきた加藤は、国立競技場で行われる準決勝の東海大相模高(神奈川)戦でも、当然のようにキックオフの笛をピッチ上で聞く。

「『ピッチの質がいいな』と思いましたね(笑)。観客も外から見た時は『凄いなあ』と思ったんですけど、それで特に緊張することはなくて、いつも通りのプレーが出せたので良かったです」。流経大柏は前半のうちにMF柚木創(3年)のPKで先制すると、ディフェンスラインと加藤で築き上げた堅陣は最後まで揺るがず。1-0の完封勝利で、決勝進出を手繰り寄せる。