“3度目の正直”だったPKキッカー…試合前からワクワク止まらず「自然と笑っていた」前橋育英14番MF石井陽が日本一のキャプテンに!!

トロフィーを掲げる前橋育英高MF石井陽主将(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.13 選手権決勝 前橋育英高 1-1(PK9-8) 流通経済大柏高 国立]

　延長戦を含めた110分間だけでなく、試合前からPK戦に至るまで堂々のチームマネジメントを続けた前橋育英高MF石井陽(3年=前橋FC)が「日本一のキャプテン」の称号を手にした。「本当に嬉しいの一言」。国立競技場の大舞台でもサッカーを楽しむ姿勢を貫いた背番号14は、取材エリアでも満面の笑みを浮かべた。

　日本一をかけたPK戦は両チームともに成功が続き、迎えた後攻7人目。ここまでチームを支え続けた頼れるキャプテンに最後の大勝負が待っていた。石井は同じくPK戦を戦った2回戦・愛工大名電戦(◯2-2、PK6-5)で1人目のキッカーを担当。甘いコースに飛んだシュートが相手GKに阻まれ、自身の失敗で敗退の危機を経験していた。

　この日は「自分は前回外してるんで、5番以内には入らないだろうと思っていた(苦笑)」(石井)との想定どおり、山田耕介監督の指名で7人目の担当。7人目まで順番が回ってくるということは「決めれば日本一」か「外せば終わり」という状況となる中、結果的により重圧のかかる“背水の陣”の後者で順番が回ってきたが、それでも不安はなかったという。

「蹴りたいなとは思っていた。こういう場で蹴れることはなかなかないし、ここに来たからには蹴りたいという気持ちがあった。緊張というよりは楽しみな気持ちだった」。PK戦前にはチームメートに「この舞台になったら勝っても負けてもおかしくない。蹴れることを楽しんでこい」と伝えていたという石井。その言葉を自ら体現するかのように、恐れることなくペナルティスポットに立った。

　キックにも迷いはなかった。「愛工大名電戦で外してチームに迷惑をかけていたので、悔いなく蹴ろうと思っていた。思った方向に力強く振り切ろうと思っていた」。力強く放ったシュートは左上の完璧なコースへ。石井は豪快なガッツポーズを見せた後、PK戦前からキャプテンマークを託していたGK藤原優希(3年)に「お前が止めるだけだぞ。自信を持って飛んでくれ」と伝えると、直後に藤原がストップし、日本一につながる勢いをもたらした。

　実は石井にとってこのPKは“3度目の正直”だった。前橋育英は昨夏、インターハイ群馬県予選準決勝で共愛学園にPK戦で敗れ、県連覇を果たせず。その時も石井はPKを失敗していた。「もともとPKは苦手」という石井。その中で「蹴らなきゃいけないというのがキャプテンとしてもあったのでずっと蹴っていたけど、それでも止められて本当にチームに迷惑をかけていた」と大きな葛藤と責任を感じていたという。