「彼らの良き理解者であり、良き道先案内人でありたい」 流経大柏・榎本雅大監督と選手たちが晴れ舞台で示した『新しい流経』を創り上げる覚悟
ゲキサカ / 2025年1月14日 20時47分
[1.13 選手権決勝 前橋育英高 1-1(PK9-8) 流経大柏高 国立]
「相手のチームも、自分たちも含めて、決勝戦にふさわしい、非常に素晴らしい試合だったというふうに感じています」。
記者会見場に姿を現した流通経済大柏高(千葉)の榎本雅大監督はそう言って、小さく息をついた。
もともとは指導者にも、教員にも、なるつもりはまったくなかったという。習志野高校時代の恩師でもある本田裕一郎監督(現・国士舘高総監督)に誘われ、足を踏み入れたこの世界で、気付けばもう20年以上もの時間を過ごしてきた。
監督の座に就くことも、人生プランには含まれていなかった。本田前監督が退任したタイミングで、自身もチームを去ろうと考えていたが、最後は熟考の末に目の前の選手たちと「新しい流経を作っていこう」と翻意して、既に名門校となっていた流経大柏を率いる覚悟を決めた。
すぐに思い描いていたような結果は付いてこない。就任1年目はコロナ禍に見舞われ、選手権も県予選決勝で永遠のライバル・市立船橋高に惜敗。2年目の選手権では全国にこそ出場したものの、まさかの初戦敗退を強いられる。3年目と4年目はインターハイも選手権も県予選を勝ち抜けない。自身が志す『新しい流経』の方向性は果たして合っているのか。自問自答する日々が続く。
「特に監督になって最初の2年は、周りの目が気になって焦っちゃったというか、『流経が弱くなったって思われたくないな』って。でも、今はだんだん理想とする形ができつつあるというか、やっぱり自分のやり方でやっていくなら、もがくはもがきますけど、一歩ずつやっていくしかないのかなって思ったんです」。
目の前の試合に勝つことも大事。選手が逞しく育っていくことも大事。あえてその両方を追い求めることこそに、自分がこのチームを率いている意味があると信じて、悩みながら、もがきながら、その時々の選手たちと全力で向き合ってきた。
迎えた今シーズン。春先から公式戦無敗を続けていたチームが初めて負けたのは、インターハイ予選決勝。市立船橋に延長戦で競り負け、またも全国切符を取り逃がす。直後のリーグ戦で話を伺った際に、榎本監督が強調した言葉が強く印象に残っている。
「一番オレがショックを受けているし、一番立ち直れていないけど、勝ち負けと別に考えないといけないことが絶対にあると思っていますから。やっぱり“好奇心”みたいなものを指導者がなくしてしまったら、選手たちもポテンシャルを引き出そうとしなくなっちゃうと思うんですよ。確かに勝ったら名将だとか言われるけれど、そういうことじゃなくて、『もしかしたらこうすれば選手が良くなるんじゃないかな』『この選手はこういう可能性があるんじゃないかな』『このポジションだったらこういうことができるんじゃないかな』ということが、やっぱり選手のポテンシャルを最大限に引き出す唯一の手段かなと思うし、そういう部分では彼らの良き理解者であり、良き道先案内人でありたいなとは思っています」。
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