顔の赤みが引かない…「酒さ」に悩む患者が急増している
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月27日 9時26分
肌トラブルといえば、ニキビを思い浮かべる人が多いだろう。ただ、頬や鼻の周りが酔っぱらったように赤く火照っているなら「酒さ」かもしれない。聞き慣れない名前だが患者数は国内に約380万人と推定され、近年、酒さと診断される人が急増しているという。「二子玉川ファミリー皮ふ科」院長の玉城有紀氏に聞いた。
「酒さは、主に頬や鼻の周囲に慢性的な赤みが生じる病気です。初期では赤くなったり治まったりを繰り返し、進行するにつれて赤みが引きにくくなります。いわゆる『赤ら顔』の状態で、人によっては火照りや灼熱感を訴えます。また、丘疹と呼ばれる赤い小さなプツプツが生じる人もいますが、ニキビのように毛穴の詰まりがないのが特徴です。30~50代の女性に多い印象があります」
酒さを発症する原因ははっきりと分かっていない。ただ、悪化因子として紫外線や湿度、気温といった外部環境や、乾燥や摩擦、刺激が強いスキンケアのほか、血管拡張作用のあるアルコールや香辛料が入った辛い食べ物の摂取が挙げられる。中でも近年は、コロナ禍から一般的になったマスク着用が大きな要因のひとつになりつつあるという。
「長時間マスクをつけた状態で過ごしていると、顔が蒸れたりマスクが擦れて肌は刺激されます。それにより酒さを新たに発症したり悪化する人が増え、コロナ前は1週間で1人程度だった患者さんの数は現在、1日1~2人にまで増加しています」
■22年から治療薬が保険適用に
これまでの治療法は、赤みやプツプツがひどい場合には抗炎症作用のある抗生物質の内服薬が処方されるほか、酒さに効果が高いといわれている漢方薬(越婢加朮湯や加味逍遥散、白虎加人参湯)や、皮膚の常在菌を殺菌させるイベルメクチンや美白効果のあるアゼライン酸の外用薬が処方されてきた。ただ外用薬はどれも自費診療な上に、効果が現れるまでに約半年かかる点からも患者の経済的な負担が大きかった。
そんな中、2022年に酒さの治療薬として効果が高いと海外で一般的に処方されていた「ロゼックスゲル(一般名:メトロニダゾール)」が、日本でも公的医療保険で認められた。
「この薬は元々、がん性皮膚潰瘍臭に対する治療薬として使われていました。抗炎症作用・免疫抑制作用によって慢性的な肌の炎症を抑えます。漢方薬と併用しながら1日1~2回塗布すると、4週目ごろから赤みが改善され始めます」
50代の女性は、半年前から顔の赤みが悪化し受診した皮膚科で酒さと診断された。メークでカバーできないほど症状が強く、人前に出るのがつらいという。ロゼックスゲルの塗布と漢方薬の服用を半年間続けたところ、周囲からはまったく赤みに気付かれない程度まで改善した。
ただ、ロゼックスゲルは妊娠3カ月以内の人や授乳中の場合には処方できない。治療を希望する際は医師によく相談する。
また、酒さを改善するには、治療薬の他にも日常生活の改善も欠かせないという。
「症状を悪化させる原因は人によって違いますが、多くの人にいえるのが熱いお湯でのシャワーを避け、洗顔の際はしっかりと泡立てて摩擦が少ないようにしましょう。また、これからの時期は紫外線が強くなりますが、紫外線は窓を通過します。自宅で過ごしている時も顔に日焼け止めをしっかり塗り、外出時は日傘や帽子で対策を行ってください」
まれではあるが、酒さは長年放置すると、「鼻瘤・腫瘤型」と呼ばれるニキビのような丘疹が集まって塊となり腫瘤を形成する。すると鼻は団子鼻のように変形し、鼻呼吸がしづらくなるなどの機能的な問題が生じる恐れがある。単なる肌荒れだと過信せず、適切な治療を受けたい。
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