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歴史的な円安、相次ぐ値上げ…生活苦は「歯」の健康へどう影響するのか?

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月30日 9時26分

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歯の良し悪しは経済状況に関係する!?

 賃金や物価、株価が上昇し、経済に前向きの変化が表れているというが、国民にはその実感がない。内閣府が5月16日に発表した今年1~3月期の実質GDP(国民総生産)は前期比0.5%減、年率換算で2.0%減だった。GDPとは国内で生産されたモノとサービスの総額で、その国の経済規模のこと。その半分以上を占める個人消費はリーマン・ショック以来の4四半期連続のマイナスとなった。

 足元の歴史的な円安も重なり日本の経済規模は縮小、一時期、キャベツ1個が1000円になるなど物価上昇のあおりを受けて、一般的な日本人の生活は苦しいままだ。

 実際、公共料金などが一斉値上げになった4月以前にまとめられた日銀の「生活意識に関するアンケート調査」ですら、「暮らしにゆとりがなくなってきた」が49.5%と高いまま。そこで気になるのが景気と健康、とくに健康の基本である「歯」の健康だ。昔から歯の良し悪しは経済状況に関係するといわれる。実際はどうなのか?

 歯科医師で「ウエダ歯科」(静岡県沼津市)の上田貴彦院長(北海道大学歯学部卒)は言う。

「景気変動が健康にどう影響するかについてはさまざまな考え方があります。近年は景気拡大期は余暇時間が減少し、ビジネスに関わる会食やストレスの増加などから死亡率が高まると報告されています。しかし、2000年以前は、景気後退期はそれに伴う失業リスク増加や受診控えの減少、食生活の悪化により、貧困層や人員削減でより多忙となる中間管理職の死亡率が増加するとの見方が強かった。少なくともお口の中の健康は、貧富の差が拡大している日本では景気後退期に悪くなります。そもそも経済的に余裕のある家庭では虫歯が少ないし、高齢者の残歯数は世帯支出が低いほど少ないのです」

 最近は10代の虫歯は減っているものの、高齢者の虫歯や歯周病が増えていて高齢者の歯科診療の必要性は高まっている。ところが、お金の問題で必要な歯科治療が受けられない高齢者が増えているという。

「年金生活が始まると途端に歯科受診を避ける高齢者は本当に多い。介護保険料などが値上がりし、痛みが出ない限り歯科医院に行かないからです。そういう人がたまに受診すると虫歯だらけで、残歯本数が少ないケースがほとんどです」

■炭水化物で空腹を満たし虫歯が増える

 2013年に介護認定を受けていない65歳以上の約20万人を対象にした、健康と暮らしの調査(JAGES2013)の新潟市のデータを基に、中学校校区における所得格差(ジニ係数)と残存歯数の関係を調べた研究がある。それによるとジニ係数が0.35を超える地域では有意に住民の残存歯数が少ないことが報告されている。さらに、国が国民健康・栄養調査と同時に行っている疫学研究「NIPPON DATA2010研究」による口腔衛生に関する分析では、世帯年収が少ないほど炭水化物の摂取量(エネルギー比率)が高く、残っている歯の数は世帯の平均支出が低いほど少ないことが明らかになっている。

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