日本男子勢が海外で勝つことが特別でなくなった最大の要因(羽川豊)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月3日 9時26分
中島啓太も米ツアーが目標(C)ゲッティ=共同
【羽川豊の視点 Weekly Watch】
今年に入って3人目の初制覇です。欧州ツアーの「ヒーロー・インディアン・オープン」で、ツアー参戦1年目の中島啓太(23)が通算17アンダーで優勝。日本人の同ツアー優勝は、青木功さん、松山英樹(32)、久常涼(21)、星野陸也(27)に次ぐ5人目となりました。
星野が勝ったのは2月のカタール・マスターズ。3月初旬には幡地隆寛(30)がアジアンツアーと豪州ツアー共催のニュージーランド・オープンを制しました。
日本人が次々に海外で勝てるようになった最大の要因は飛距離です。中島や久常に限らず、身長が180センチに満たなくてもドライバーで300ヤード以上飛ばす学生はたくさんいます。
私が学生の頃はドライバーはパーシモン。ボールは糸巻きでした。日米大学対抗で対戦しても米国選手との差は歴然。ドライバーが250ヤード以上飛んでも、米国選手の2番アイアンとほぼ同じ。パー5のスコアで差が出ました。
今の若い選手はトラックマン(弾道計測器)で理想的な打球の回転数、回転方向、クラブ軌道、入射角などを分析。進化した用具の性能を最大限に引き出すための体づくりは欠かさないものの、我々が練習場で数千、数万と打って掴んだショットの感覚を、科学の力で短時間でものにできるのは大きい。器用な日本選手は昔からアプローチやパットのうまい人が多い。今は350ヤード以上も飛ばす怪物級の欧米人もいますが、180センチ未満の身長でも300ヤード超のドライバーショットがあれば海外で通用することを、久常や中島は証明してくれました。
ティーショットの飛距離で臆することがなければグリーン回りやパットに集中できます。換言すれば、パットが悪ければ上位争いは厳しい。「寄せる」のではなく、狙って入れるパッティングでなければなりません。欧米ツアーはコースによってフェアウエーやラフ、グリーンの芝質も異なります。経験を積み、各地のコースに対応できる力をつければ、メジャーでも十分戦えるはずです。
欧州ツアーは年間ポイント10位以内(有資格者除く)なら来季の米ツアーの出場権が与えられます。久常はこの資格で今季は米ツアーに参戦。中島も同じルートでの「移籍」を目指しています。先週開幕した今季国内ツアーの試合数は史上最少の23。海外メジャー出場や、米ツアー参戦を夢見る者は世界ランクを上げるため戦いの場を海外に求めなければなりません。今後は欧州ツアーやアジアンツアーの予選会に挑戦する選手が増えていくでしょう。
(羽川豊/プロゴルファー)
◇ ◇ ◇
国内の男子ツアーは虫食い日程、録画放送、低レベルなコースで悲惨な状況にあるのは言うまでもない。
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