元日劇ミュージックホールのトップダンサー吉元れい花さんは刺繍作家に 2年前には岡本太郎賞を受賞
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月22日 9時26分
さて、れい花さんは大阪で育ち、中学時代に見た劇団俳優座の「森は生きている」に感動、東京の桐朋短大演劇科に進み、千田是也や安部公房らの教えを受けた。卒業後はダンサーになろうと決意、日本モダンダンス界の第一人者アキコ・カンダに師事した。
「3年間、寝ても覚めてもダンス漬け。下宿に帰っても稽古をしていたので、友だちが訪ねて来た時、ボロボロにすり減った畳を見て驚いてました」
日本テレビのプロデューサーだった井原高忠に見いだされ、高級レストランシアター「赤坂コルドンブルー」で1年間踊った後、25歳でNMHに引き抜かれ、トップダンサーとなった。在団中は池田満寿夫や蜷川幸雄、佐藤信らの演出を受けた。
「ショートカットに172センチの身長なので中性的に見えたのか、宝塚ファンの女性が次々と見に来て。でも司会のトニー谷さんが『れい花に色気があったら鬼に金棒なんだけど』とおっしゃって。『これを見て勉強しなさい』とプレゼントしてくれた、見返り姿の日本人形は今も大切にしています。休暇中もニューヨークのアルビン・エイリー・ダンスカンパニーで修業をしたり、体中の細胞が爆発しそうなくらい、毎日踊っていました。今、刺繍をやっていても『表現の神髄は肉体に在る』と信じているのは、この頃の体験がベースになっています」
NMH解散の後、バロン氏と結婚した。
「バロンさんは私の表現活動の最大の理解者。彼と結婚したから気持ちはずっと踊り子のままでいられる。日本の踊り子の元祖は古事記のアメノウズメ。彼女は全裸で踊ることで天岩戸を開けて世界の光を取り戻した。私も肉体をさらけ出し踊ることこそが至上の美だと、レビューの世界に飛び込みました。刺繍もダンスも命の躍動。世界は戦争が絶えないけど、日本はアメノウズメが開けた光の扉を閉めることなく、平和の国でいてほしいと思います」
(取材・文=山田勝仁)
▼楽繍会主催「楽繍展」は4月20~26日(火曜休館)、阿佐谷・アートスペース煌翔
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