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一発勝負の夏の大会 大院大高は「ノーサイン」で大阪桐蔭を2度倒せるか(小倉清一郎)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月3日 9時26分

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96年センバツの大院大高─横浜戦、六回に宇畑が三盗、捕手の悪送球で大院大高が先制(C)共同通信社

【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】

 春の大阪大会で大院大高が4回戦で履正社、準々決勝で大阪桐蔭の「2強」を撃破して初優勝した。春夏秋を通じ、大阪大会でこの2校に勝ったのは、2009年夏のPL学園以来15年ぶりの快挙だそうだ。

 昨春就任した辻盛英一監督の方針で「ノーサイン」で頂点に立ったというから恐れ入る。甲子園出場は1996年春のみ。それで思い出した。

 28年前のセンバツ初戦で当時、部長を務めていた横浜が対戦していた。抽選会で1回戦の対戦が決まり、私は大院大高を偵察するため、報徳学園と練習試合を行う中モズ球場へと向かった。ばっちり視察できたため、投手から野手まで「小倉ノート」で丸裸にした。

 分析して最も気になったのは、大院大高の1番打者・宇畑洋平のめちゃくちゃな走塁。一塁か二塁走者の際、ワンバウンドした瞬間に必ずスタートを切るのだ。今で言うギャンブルスタートのような形で、捕手が少しでもはじけばセーフになるが、捕手がショートバウンドを捕球して、慌てずに送球できれば、ベースの5~6メートル前で悠々アウト。これはいいカモだ--。横浜の正捕手・戸松尚弘とかなりこの練習をやった。念のため、雨天時を想定したり、滑るニューボールを使って繰り返した。

 雨の中で行われた実際の試合。0-0で迎えた六回表にその場面が訪れた。無死二塁のピンチで二塁走者は宇畑。投球がワンバウンドし、走者は三塁へスタートを切った。刺せる--と思った瞬間、戸松の送球が暴投となり、先制点を許した。

 この年の横浜のレギュラーは右打者が多く、大院大高のアンダースロー投手・椎葉厚生に散発4安打に抑えられた。雨のため、田んぼのようなグラウンド状態の中、横浜の松井光介も力投したが、1-2で敗れた。

 順当なら準決勝で優勝候補だった浦和学院と対戦するつもりだった。足をすくわれた格好で、あれだけ練習してきたプレーが本番でできなかった悔しさもあって、今でも覚えている敗戦だ。

 その大院大高が今春はノーサインで大阪を制した。練習などは選手の自主性に任せ、髪形も自由だという。これは私の理想でもあるが、試合中に選手だけで作戦を決めるのは限界がある。まして一発勝負の夏の大会は、一度の判断ミスが命取りになる。大院大高の新しい野球に期待したいが、ノーサインで2度勝てるほど大阪桐蔭は甘くない気がする。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)

  ◇  ◇  ◇

 日刊ゲンダイでは元横浜高校野球部部長の小倉清一郎氏と専大松戸の持丸修一監督のコラムを毎週交互に連載している。

【関連記事】にはそれらをピックアップ。ちなみに、掲載から約1カ月で有料会員限定公開に移行するため、今のうちに要チェックだ。

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