“小売業再生の請負人”と呼ばれる西友・大久保恒夫社長兼CEOと大株主KKRにすきま風が(有森隆)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月6日 9時26分
西友の大久保恒夫社長(右)は、楽天G(三木谷会長兼社長=左)と連携でOMO戦略を本格化(C)共同通信社
【企業深層研究】西友(下)
西友はかつては西武百貨店(現そごう・西武)とともに、(故)堤清二氏が率いる旧セゾングループ(西武流通グループ)の中核企業だった。
バブル崩壊でセゾングループは解体。2002年に西友は小売業世界最大手の米ウォルマートの傘下に入った。ウォルマートが強みを持つEDLP(毎日が安売り)を取り入れたが、価格競争で勝つことはできなかった。ウォルマートは15%の株式を保有し続けるものの、西友の経営から手を引くことになった。
21年3月、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と楽天(21年、楽天グループに社名変更)が共同出資する形で新たな経営体制がスタートを切った。
「小売業再生の請負人」の異名がつく大久保恒夫氏が西友の社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した。
大久保氏は1979年3月に早稲田大学法学部を卒業、イトーヨーカ堂に入社。独立して、90年にコンサルティング会社、リテイルサイエンスを設立。ユニクロ、無印良品の経営改革で名を高めた。
ドラッグイレブン社長、成城石井社長、デニーズの運営会社のセブン&アイ・フードシステムズ社長を務めた。古巣のセブン&アイ・ホールディングス(HD)の常務執行役員を経て、リテイルサイエンスに復帰。西友の再生請負人に招かれた。
低価格路線は採らないと言っている大久保氏がどんな策を打ち出すかが注目された。楽天Gと連携し、OMO(オンラインと実店舗の融合)戦略を本格化させた。
楽天は2018年、西友との共同出資で楽天西友ネットスーパーを設立していた。
21年、経営体制変更後、25年に「食品スーパーで業界ナンバーワン」「ネットスーパーで業界ナンバーワン」を目指す中期経営計画を策定した。
しかし、経営体制にきしみが生じた。楽天Gは23年5月、保有する西友HD株20%をKKRに220億円で売却し、スーパーの経営から身を引いた。この結果、KKRの持ち株比率は65%から85%に急上昇。残り15%はウォルマートが引き続き保有する。
楽天Gは23年12月、楽天西友ネットスーパーを完全子会社にするとした。1年の移行期間を経て社名やサービスの詳細を固める。
これで楽天とKKRの共同経営体制はあっけなく崩壊。KKRが食品スーパーを、楽天がネットスーパーを引き受けることになった。
西友が北海道、九州の店舗(=不動産)を売ったのはKKRの出口戦略の一環である。大久保氏は、東洋経済オンラインのインタビュー(5月2日付)で、「これは株主(KKR)が判断したこと。私は反対したわけではないが、賛成もしていない」と語っている。
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