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Mrs. GREEN APPLE「コロンブス」は何が問題だったのか? 映画で「奴隷制」を理解する(文/北島純)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月13日 9時26分

 スティーブ・マックイーン監督の「それでも夜は明ける」(2013年)も必見だ。自由黒人(奴隷の身分から解放された自由人とその子孫)にもかかわらず奴隷商人に拉致された音楽家の12年にわたる奴隷生活を描く。キウェテル・イジョフォーら俳優の演技、美しい映像、ハンス・ジマーの音楽、すべてが超絶にエモく、アカデミー賞作品賞を受賞。女性奴隷を演じたルピタ・ニョンゴも助演女優賞を獲得、これでブレークした。

 奴隷はギリシャ・ローマの時代から存在している。しかしコロンブスの航海に端を発する南北アメリカ大陸の奴隷制は今に至るさまざまな問題(人種差別や南北問題等)の要因になっている。特に北米の綿花農園での奴隷制は、アメリカ・欧州・アフリカ間の「三角貿易」の根幹を形成し、莫大な利益を大英帝国にもたらして資本主義が勃興する原資蓄積の基盤となった。古い話のようでいて現代の資本主義社会に直結する問題なのだ。

 カリブ海に浮かぶ仏領マルティニク島が生んだ詩人エメ・セゼールは「ヒトラーの蛮行(ホロコースト)と同じことを、白人は植民地でとっくのとうにやっていた」と指摘し「植民地化が植民地支配者をいかに非文明化・野獣化・堕落させたか」を問うている。そのマルティニク島を「発見」したのがコロンブス、マルティニク島で生まれ育った没落貴族の娘ジョセフィーヌを妻としたのがナポレオン、皇帝に即位して欧州中に戦火を広げたナポレオンに失望したのがベートーベンだ。猿たちの敬礼シーンもあるMV「コロンブス」、投げかけている問いは重い。

▽北島純(きたじま・じゅん) 映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。

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