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元グーグル日本法人代表 辻野晃一郎氏が喝破 無責任体質が経済停滞とデジタル化の遅れを招いている

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月22日 9時26分

 ──組織内で誰も声を上げられなくなっていると。

 2018年ごろのグーグルでの事例ですが、米国防総省の軍事プロジェクト「プロジェクト・メイブン」に、グーグルが自社のAI技術を提供していたのですが、これに社員たちが猛反発。何千人もの社員が「軍事に加担するのはポリシーに反する」と社内でデモをやったり、抗議文をCEOに突きつけたりと、反対運動を展開しました。最終的にCEOがプロジェクトからの撤退を余儀なくされるということがありました。

 ──組織の上層部ではなく、下から自浄作用の動きが出てくるわけですね。

 今の日本の組織は、その対極にあります。2015年に発覚した東芝の不正会計や、今回の自動車メーカーの不正も根っこは同じ。さらに言うと、財務省による公文書改ざんも元凶は一緒です。下から上に意見を言いにくい組織の「ピラミッド構造」が原因です。

 ──どういう構造ですか。

 意思決定がトップダウンで現場に伝達され、原則皆それに従って「受け身」で動くスタイルです。現場は、上からの命令や指示に対して自分の意見を言ったり抵抗しにくい。財務省の公文書改ざんを巡っては、上の指示に抗しきれずに改ざんに手を染めた職員が自殺に追い込まれたほどです。このピラミッド構造は、「隠蔽」や「忖度」などが生まれるもとでもありますし、行政のデジタル化の遅れにもつながっています。

 ──日本は遅れが指摘されて久しいですね。

 デジタルの時代は「オープン」や「フラット」がキーワードです。ところが、日本では行政のデジタル化を進める上で、まずデジタル庁という縦割り組織を新設しました。そしてデジタルの専門家でもない剛腕とされる政治家をトップに置いて、上意下達の恫喝命令型、強行突破型のスタイルでマイナカードなどを推進しています。ウィズダム・オブ・クラウズを活用して、間違えたら軌道修正を繰り返しながら徐々に完成度を高めていく、というのがデジタル時代の本来のやり方です。台湾では行政のデジタル化にオードリー・タン氏が多大な貢献をしましたが、やり方が全く違います。

 ──これでは日本はなかなか前に進めませんね。

「鯛は頭から腐る」といいますが、国政でも都政でも、平気でウソを重ねるような人物がトップに居座り続けてきたことで、リーダーが責任を取らない姿が当たり前になり、モラルハザードが社会の隅々にまで蔓延しています。しかし、今回の選挙結果からも明らかなように、このような実態に対する人々の危機意識がまだまだ希薄です。日本人は現状変更を嫌う傾向が強いとされますが、それに加えてあきらめのムードも強まっているのかもしれません。しかし、生成AIなども登場し、世の中は激変しています。いいかげん昭和型の古い体質を打破して、衆愚とは真逆のウィズダム・オブ・クラウズの力を発揮し、日本社会をアップデートすることが急務です。

(聞き手=小幡元太/日刊ゲンダイ)

▽辻野晃一郎(つじの・こういちろう)福岡県生まれ。1984年に慶大大学院工学研究科を修了し、ソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大大学院電気工学科を修了。2006年、ソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。10年にグーグルを退社し、アレックス株式会社を創業。現在は代表取締役社長兼CEO。「グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた」など著書多数。

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