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6本の映画で理解する「大統領(候補)暗殺」(映画評論家・北島純)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月24日 9時26分

6本の映画で理解する「大統領(候補)暗殺」(映画評論家・北島純)

銃撃されても「戦え」と拳を突き上げたトランプ(AP=共同)

 7月21日、ついにバイデン大統領(81)が大統領選を辞退した。心身の衰えに撤退を求める声が高まる中、本人は指名受諾を諦めていなかったが、そこに発生したのがトランプ前大統領(78)の暗殺未遂事件だ。右耳を撃ち抜かれても「戦え」と拳を突き上げたトランプに支持者は熱狂。共和党大会ではこれまでさんざん批判してきたニッキー・ヘイリー元国連大使(52)までトランプ支持に転じた。

 共和党の勢いを前に、このままでは大統領選だけでなく同時実施の上下両院選挙でも民主党が敗北する恐れ(トリプルレッド)があるとして、ジル夫人の助言を受け入れたバイデンがようやく白旗を掲げた形だ。

 現職大統領が選挙戦から撤退するのはリンドン・ジョンソン以来だ。1963年のジョン・F・ケネディ大統領暗殺を受けて副大統領から大統領に昇格したジョンソンは64年の大統領選では同情票もあって圧勝。しかしベトナム戦争の泥沼化に足をすくわれ68年3月、再選を目指していた選挙戦から突如撤退した。民主党の有力候補はJFKの弟ロバート・ケネディ元司法長官だったが兄と同じく暗殺され、予備選に出馬していなかったハンフリー副大統領が急きょ指名されたが共和党ニクソンに敗北を喫する。リンカーン暗殺(1865年)を含めて、アメリカ政治は凶弾による政治家の暗殺に左右されてきた。そうした大統領(候補)暗殺を描いた映画を紹介しよう。

■レーガン暗殺未遂につながった「タクシードライバー」

 まずはマーティン・スコセッシ監督「タクシードライバー」(1976年、ロバート・デニーロ主演)。72年のジョージ・ウォレス大統領予備選候補(民主党)狙撃事件に着想を得た作品で、カンヌ・パルムドールを受賞した名作中の名作だ。街娼を演じたジョディ・フォスターの偏執狂的ファンがこの映画に感化され、81年にレーガン暗殺未遂事件を起こしている。

 政治家の暗殺に付いて回るのが「陰謀論」。ケネディ暗殺はCIAやFBI、マフィアの陰謀で、黒幕はジョンソンだとする説も根強い。世界的ヒットになった「JFK」(91年)や「JFK 新証言 知られざる陰謀」(2021年)で「軍産複合体の陰謀」を追及してきたオリバー・ストーン監督は現在、一周回って親プーチンに転じている。

 陰謀論が生まれる土壌には情報の混乱、とくに暗殺現場の混乱がある。今回のトランプ暗殺未遂でも犯人トーマス・クルックスがなぜ屋根から狙撃できたのか疑問を呈する声も強いが、断片的情報に飛びつくのではなく総合的かつ慎重な評価が必要だ。「バンテージ・ポイント」(ピート・トラビス監督、08年)は大統領暗殺現場を複数視点で描いた実験的な映画として参考になる。

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