認知症との誤診に注意! 高齢者のてんかんはけいれん発作が生じないケースが多い
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月27日 9時26分
認知症との誤診に注意
認知症だと思っていたら、実は「てんかん」だった──。北里大学医学部精神科学講師で相模原市認知症疾患医療センター長の大石智氏によれば、こういったケースは珍しくないという。詳しく話を聞いた。
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自動車整備工場で働く60代後半の男性は、2~3年前から職場で「ぼんやりしていて会話が成り立たない」「指示した内容を何度も忘れる」と指摘されていた。
受診した近所の脳神経内科では、アルツハイマー型認知症の疑いがあるとの診断。経過観察の状態が続いていたが、今から約半年前、家族旅行から帰宅すると、旅行の記憶がスッポリ抜け落ちていることに気が付いた。異変を感じた家族に促され、大学病院で検査を受けた。診断名は「てんかん」だった。
「てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮することで一時的な症状が繰り返し起こる脳の慢性疾患です。高齢者てんかんで最も多いのが脳卒中の後遺症で、約30~40%を占めるといわれています。ほかにも脳腫瘍や頭部外傷、アルツハイマー病によって発症しますが、全体の3分の1は原因不明とされ、誰にでも発症する可能性がある病気です」
てんかんというと、「子供の病気」というイメージが強いかもしれない。子供のてんかんではけいれん発作がよく見られるが、高齢者の場合、それは非常にまれで、けいれんを伴わない「複雑部分発作」が見られやすい。具体的には、「ボーッとしている」「呼びかけに反応しない」といった意識障害や、「口をペチャペチャ・モグモグさせる」「机や膝の上を指でトントン叩く」といった状態だ。 1~2分ほど続くが、目立った症状ではないため、周囲が異変に気付きにくいという。
「高齢者がてんかん発作を起こすと、発作直後に意識障害が残る『もうろう状態』になることがある。自力で食事が取れないだけでなく、あちこちウロウロと動き回るので、壁にぶつかったり転落する危険があります」
発作の後のもうろう状態は、数十分から長くて1週間続くケースも見られるが、本人はその間の記憶がないので、意識が回復しても周囲と話が噛み合わない。
「発作は飲酒や寝不足のほか、抗コリン作用を含む薬剤によって誘発されやすいことが知られているので、注意が必要です」
通常、てんかん発作は数分で消滅するが、子供に比べて高齢者は意識障害が回復する前に何度も発作を繰り返す「てんかん重積」を来しやすい。入浴中であれば溺死、運転中であれば事故につながりかねない。
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