川合俊一らと男子バレー“御三家”だった井上謙さんは「発達障害の息子のおかげで学んだ」【あの人は今】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月12日 9時26分
元男子バレーボール選手の井上謙さん(C)日刊ゲンダイ
【あの人は今こうしている】
井上謙さん
(元男子バレーボール選手/61歳)
熱戦続きで寝不足の日々が続くパリ五輪。メダルの期待がかかった男子バレーボールの試合を楽しんでいる向きは多かっただろう。石川祐希選手や高橋藍選手の活躍で、五輪前の世界ランキングでは2位につけていた。しかし、男子バレーはこれまで長く低迷。そんななか、80年代の男子バレー人気を支えたのが、井上謙さんや現タレントの川合俊一だ。井上さん、今、どうしているのか。
◇ ◇ ◇
井上さんに会ったのは、東京メトロ・虎ノ門ヒルズ駅そばにある株式会社日立ハイテクサポートの会議室。
「35歳のとき、茨城県日立市の地域リーグ『日立国分トルメンタ』で現役を終え、その後はそこで監督を務めていたのですが、2002年に廃部になり、そのまま日立グループで働いています。東京へは08年に来ました」
井上さん、まずはこう言った。差し出した名刺には「障がい者雇用支援センタ」とある。
「日立ハイテクグループ全体の障害者雇用をコンサルティングしています。約3年間部長の肩書で、部下6人の部門を率いていましたので、去年2月に60歳定年を迎え、再雇用で一社員となった今は、気持ちが楽になりましたね。ただ、部長のときも部下が優秀で、自分は助けられてばかりだったのですが(笑)」
井上さん、謙虚だ。
「仕事は具体的には、就職を希望する障害者のいる学校や支援機関を訪問したり、障害者本人と面談したり。自分の息子に障害があるので、彼と接するなかで学んだことが役に立っています」
1994年、出身の長野県岡谷工業高校のバレー部の監督夫妻の紹介で、1歳年下の元新体操選手と結婚。29歳の一人息子は広汎性発達障害があるのだという。
「息子の障害は重く、こちらの話は多少理解できますが、意思表示は苦手です。息子が1歳の頃、医者から発達障害の可能性を指摘されたときは大きなショックを受け、『成長すれば普通の人と同じになるんじゃないか』と、受け入れられるまでに何年もかかりました。でも、息子のおかげで僕自身が多くを学び、バレーの指導にも役立ったと思います」
どういうことか。
「たとえば、普通ならできて当たり前のことも、自分の子はできない。だから、ちょっとできたらこちらもうれしいし、認めてあげる。そして、できるまで待ってあげる。良いところを見てあげる。バレーの指導も同じなんです。息子のおかげで自分自身が変わったからこそ、監督業が務まったのだと思います」
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