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クリストファー・ノーランと野田秀樹 ふたりは鳴き声を異にする〈炭鉱のカナリア〉どうしなのかもしれない(松尾潔)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年8月16日 9時26分

クリストファー・ノーランと野田秀樹 ふたりは鳴き声を異にする〈炭鉱のカナリア〉どうしなのかもしれない(松尾潔)

(C)日刊ゲンダイ

【松尾潔のメロウな木曜日】#97

 先週金曜(8月9日)、長崎市では平和祈念式典が挙行された。1945年のこの日にアメリカ合衆国が長崎に原子爆弾「ファットマン」を投下して、今年で79年が経つ。ファットマンこそは〈最後の核兵器〉だ。当時の長崎市の人口24万人(推定)のうち、約7万4千人の命を奪ったとされる。

 今年の平和祈念式典は近年記憶にないレベルで大きな注目を集めた。確たる理由がある。先進7か国(G7)で日本を除く6か国の駐日大使が、イスラエルが招待されないことを理由に出席を見合わせたのだ。長崎市はイスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエル駐日大使の不招待を早々に決めていた。それに米英独仏伊とカナダの6か国、さらに欧州連合(EU)の大使らが異を唱えたわけだ。7月19日付けの連名書簡では、長崎市がロシアと(同国を支援する)ベラルーシを招待しないことに触れて「イスラエルを同列に置くことは誤解を招く」と懸念を表明していた。2022年以来、式典にロシアとベラルーシを招待していないのは広島市も長崎市も同じ。欧米諸国とともに制裁を科す日本政府の姿勢に同調(あるいは追従)してのことだ。だが長崎市はパレスチナを招待してイスラエルを招待せず、広島市はその逆をいった。つまり両市の対応はくっきり分かれた。

 広島市の松井市長は、パレスチナを招待しないのは「日本政府が国家承認していないから」と主張しつつ、イスラエル招待で予想される強い反対運動を見越して式典中の市民立ち入り禁止区域の拡大を決めるなど、事前の策にも余念がなかった。

 一方の長崎市だが、鈴木市長は式典前日(8日)の記者会見で、イスラエル不招待について「政治的な理由ではなく平穏かつ厳粛な雰囲気のもとで式典を円滑に実施したいという理由」と説明。G7の大使たちが欠席を表明したからといってイスラエル不招待の判断は変えない、とも述べた。ここで鈴木市長は昨年4月就任であることに注目したい。22年時点で市長職に就いていれば、今回だってロシアとベラルーシを含む世界の全諸国を招待したかったのでは。彼はそんな思想と政治信条の主であるようにぼくには思えて仕方がないが、はたしてどうなのか。

 いずれにせよ、今回ふたつの被爆都市は歴史ある平和式典への対応に大きな違いをみせたわけだ。国際社会は混迷のさなかにあり、この国の外交政策もさほど堅固ではない。この現実はぼくを大いにモヤらせる。

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