1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

糖尿病を「手術」で治す…膵臓移植はいまどうなっているのか

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月13日 9時26分

糖尿病を「手術」で治す…膵臓移植はいまどうなっているのか

インスリンは不要に?

 糖尿病治療というと、経口やインスリン注射などの薬剤治療のイメージが強いが、膵臓移植手術で治す方法もある。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

「手術で糖尿病を治す方法は2つあります。1つは『膵臓移植』といって、インスリンを分泌しながら血糖を制御している膵島を分離せず膵臓ごと移植する手術です。糖尿病の治療には不要な部分ごと移植するのは手術が簡単だからです。移植した臓器や細胞が移植後も生き続けることを生着と言いますが、膵臓移植の生着率は高く、1年後に臓器を受け取った患者さんの80%以上はインスリン注射が不要になるといわれています」

 実際の手術は全身麻酔で行い、開腹して膵臓を十二指腸の一部と一緒に移植する。移植時には臓器を提供する側と受け取る側の血管をつなぎ合わせるため手術リスクは高く、手術時の合併症も起こりやすいとされている。それでも手術による直接の死亡率は、通常の消化器外科領域の開腹手術と比べて高いものではないといわれている。

 もう1つは「膵島移植」といって、インスリン分泌に必要な内分泌細胞(膵島)のみを取り出して、局所麻酔下において肝臓内の血管である門脈に注入する細胞移植法だ。

「移植自体は膵臓移植よりも肉体的負担が軽いのが特徴です。超音波検査とレントゲン検査を組み合わせ、肝臓に針を刺してチューブを介して点滴の要領で肝臓に移植します。膵島移植は2~3回移植することが多く、膵島細胞は肝臓内で生着し、血糖に反応してインスリンを分泌するようになり、インスリン注射が不要になる人もいます」

 手術の対象となるのは重度の糖尿病患者で、主に1型糖尿病の患者。具体的には膵島の機能が著しく低下して自分の膵島からインスリンが分泌できず、インスリン注射治療や食事、運動療法を行っても血糖制御が極めて困難で、意識を失う重症低血糖発作を起こす患者が対象となる。

「重度の糖尿病の患者さんの多くは膵臓だけでなく腎臓もダメになっているケースが多い。そのため膵臓移植には3つの手術法があります。腎不全がある場合は膵臓と腎臓を同時に移植する膵腎同時移植(SPK)、先に腎臓移植をした後に膵臓移植を行う腎移植後膵移植(PAK)。それに、腎不全がない場合に行う膵単独移植(PTA)です」

 いままでのところ3つの手術法の割合は、SPK85%、PAK12%、PTA3%となっている。残念ながら膵臓移植の症例数は決して多くない。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください