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長寿研究のいまを知る(4)老化抑制に強く影響する「サーチュイン遺伝子」と「エピジェネティック」

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月3日 9時26分

長寿研究のいまを知る(4)老化抑制に強く影響する「サーチュイン遺伝子」と「エピジェネティック」

サーチュイン遺伝子に注目が集まる(C)日刊ゲンダイ

 今以上の長寿を実現するには、テロメアへのアプローチ以外に、どのような方法がありえるのか? ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師は大きく2つある、という。

「ひとつはダメになった臓器を全部、もしくは一部交換する方法です。例えば、亡くなった方などの腎臓や心臓の移植だったり、歯のインプラント、人工関節、眼内レンズといった人工臓器だったり、ウシの心膜やブタの大動脈弁で作った生体弁を壊れた心臓弁と交換することなどはすでに行われています。今後は、医学の進歩によって新たな技術が生まれ、より広範囲に行われる可能性があります」

 2022年1月に米国で遺伝子操作によってつくられたブタの心臓を人間へ移植する手術が世界で初めて行われた。これなどその典型だろう。

 もうひとつは、全身の細胞に働きかけて、老化を可能な限り均等に遅らせる方法だ。

「テロメアの短縮を防いだり、伸ばしたりするアプローチもそのひとつですが、いまは長寿に関係する特定の遺伝子のスイッチをオンにすることで長寿を目指すという研究が盛んに行われています。そのターゲットのひとつとして世界の研究者が注目するのが『サーチュイン遺伝子』です」

 サーチュイン遺伝子は別名「長寿遺伝子」と呼ばれ、老化や寿命の制御に重要な役割を果たしているとされる。サーチュイン遺伝子は、現在、哺乳類ではSIRT1からSIRT7までの7種類が発見されており、それぞれの遺伝子から作り出される特定タンパク質(サーチュイン酵素)の発現量を増やすことで老化を制御している。

「7種類のうち最も重要な働きをしているのがSIRT1で、血糖値を下げるインスリンの分泌を促したり、糖や脂肪の代謝をアップし、神経細胞を守って記憶や行動を制御するなど、老化や寿命に大きな関係があることがわかっています。SIRT3は細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアにおいて、エネルギー=ATPの合成を促します。SIRT6はDNA(デオキシリボ核酸)の2本の鎖の修復に関係します」

■遺伝子スイッチの仕組み

 そもそも遺伝子のスイッチのオン、オフはどのようにして起きるのか? それを理解するために、ざっと細胞と染色体などの基礎について知っておきたい。

「人間は約250種類、約60兆個(約37兆個など諸説ある)の細胞でできています。そのなかに核があり、染色体が入っています。これを拡大するとヒストンと呼ばれるタンパク質にDNAが巻き付いていることがわかります。DNAの一部に、生物の特徴を決めたり、細胞の活動を支えるために必要な約10万種類のタンパク質を合成するための設計図である遺伝子が刻まれています。染色体はDNAを2回巻き付けたら、残りのDNAを別のヒストンに2回巻き付け……といった構造になっていて、DNAがからまって切れたりするのを防いでいるのです」

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