“遅きに失した”Jリーグ人件費抑制策「プロABC契約」撤廃…25年前に施行されたルールをやっと変更
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月5日 9時26分
ようやくプロらしい報酬額となる(試合はJ1の町田―浦和戦)(C)Norio ROKUKAWA/office La Strada
【六川亨のフットボール縦横無尽】
Jリーグは、9月の理事会で1999年から導入されていたJリーグの契約制度「プロABC契約」の撤廃を含む大幅な改定を行うことを発表した。
日本サッカー協会(JFA)、日本プロサッカー選手会(JPFA)などと時間をかけて議論を続けてきた。その結果、「選手のステータス向上」「海外クラブとの選手獲得競争や海外クラブ移籍による移籍金獲得額の向上」に向けて、制度の改定を実施すべきと判断した。
正直なところ「遅きに失した」という印象は拭えない。何しろ25年も前に施行されたルールが、そのまま踏襲されて今日に至ったのだから。
ただ、選手を取り巻く環境は、時代の変化とともに改善されてきたのも確かであり、それが今日のJ60クラブに繋がったのだろう。今回は「明文化」されたことに意義があるのかもしれない。
と言ったところで「プロABC契約」が何を意味するか、分からない読者も少なくないだろう。
まずは、Jリーグの選手契約における推移を簡単に紹介しよう。
Jリーグがスタートした1993年。ヴェルディ川崎(現東京V)と横浜マリノス(現横浜F・マリノス)が覇を競い、人気・実力とも群を抜いていた。
当時、選手を引き抜かれないために、高額年俸で引き留めることが日常茶飯事だった。選手の年俸はどんどん高騰し、大学を中退してJリーガーとなった選手が、新車のポルシェを乗り回すようになった。
市民球団としてスタートした清水などは「利益を税金で持っていかれるなら選手に還元しよう」という球団トップの放漫経営がたたり、バブル経済の弾けた1997年には、運営母体のテレビ静岡が経営から撤退したために経営危機に陥った。
累積赤字は17億円とも言われたが、幸いにも地元企業の鈴与グループが"白馬の騎士"となり、経営を建て直して今日に至っている。
この年、川淵三郎・初代チェアマンは「身の丈にあった経営」をスローガンにして、契約選手を25人に制限するなど人件費の抑制策を提唱した。1998年10月には、ゼネコン準大手の佐藤工業が、横浜フリューゲルスから撤退することでクラブの存続が危ぶまれ、横浜マリノスと合併することが発表された。
こうした紆余曲折を経て、Jリーグは1999年から「プロABC契約」を導入したのである。
高卒と大卒のルーキーはプロC契約からスタートし、初任給の年俸は460万円で統一。これをベースに5試合ほど公式戦のピッチに立ち、2年目以降の選手はA契約に移行できるといったルールを採用した。
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