小林聡美さんが表現者として「年を重ねる」とは… 《等身大》と呼ばれることへのちょっとした反発も
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月6日 14時3分
■書き続けるコツは責任を持たないこと
──日常をつづったエッセーも人気ですが、執筆活動で心掛けていることはありますか。
無責任に聞こえるかもしれませんが、書くものにあまり責任を持たないことですね。あれこれ難しく考えると書けなくなるので、「どうせ誰も読んでいない」ぐらいの勢いで書く方が私には合っています。取り上げるエピソードについても、何人かには共感してもらえたらいいな、という話題を考えて拾っています。連載などで今月は書くことがないなと思っても、「あの出来事を見方を変えたらエッセーに書けるかも」と、日常の引っ掛かりをいかに面白がられるかだと思うんです。やっぱり私自身が面白がれないと書けないし、伝えられませんから。
原動力は食事、心がこもったものを
──俳句づくりもしていますね。
エッセーや小説は何ページも書いてひとつの世界を表現しますが、俳句は17文字で映像を浮かび上がらせたり、心に響くものがつくれたりする。ミニマムな言葉で表現できるところが魅力的ですね。昔から興味はありましたが、もっと年を取ってから始めるものだと勝手に思っていました。落語に興味を持つようになり、噺に俳句が出てきたり、句会を開いている噺家さんが多かったりしたんです。その実録本を読んでみたらとても面白くて、ハードルが高いと思っていた私にとってゲーム感覚で遊んでいるように感じられた。これなら私にもできるかも、と思って友人たちと句会を始めました。俳句を始めたことで、季節感をより深く味わえるようになりました。
──時代の流れのキャッチ、情報収集はどうやって?
自分の見えているものって本当に範囲が狭いなと思っています。一方で、不便なくひとまず毎日無事に過ごせているので、これ以上、何か情報が必要なのかなと思うことも。だからこそ、私みたいな「等身大」の人間は、いろいろ見た方がいいんじゃないかと。ラジオを聴いたり、テレビでニュースを見比べたりはたまにしますが、仕事場でお会いする方々や、周りの友人に話を聞くことの方が多いかもしれません。いかにもウソやデマみたいなものに振り回されるのは悔しいので、何となく世の中の雰囲気を気にしながら、ざっくり把握している感じですね。
──「団地のふたり」では「50代」というキーワードが出てきます。ご自身にとって「年を重ねる」とは?
年を重ねることは自然なこと。皆、同じように重ねますし、隠すつもりもありません。年を取ったからといって、守りに入るという意識は特にないですね。守るのは健康な体くらい。かといって、挑戦し続けてやるという気概があるわけでもないのですが、年を取れば活躍のフィールドは若い頃と変わるものです。その時その時の出会いや仕事に、楽しみながら一生懸命向き合うだけのことだと思っています。若い頃の後悔も全然ありません。むしろ、いろいろな経験を積んでおいた方がいいですよね。経験こそが宝物ですから。
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