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老化細胞を取り除く「ワクチン」「薬」は競争が激化している【長寿研究のいまを知る】#6

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月17日 9時26分

老化細胞を取り除く「ワクチン」「薬」は競争が激化している【長寿研究のいまを知る】#6

老化細胞が蓄積すると厄介な問題が(C)日刊ゲンダイ

 細胞は老化すると分裂を止めて老化細胞となり、動かなくなる。これは細胞分裂を繰り返すうちに損傷DNAの転写エラーが起きていびつな細胞が誕生し、それが体内で増殖し続けるのを防ぐ、がん抑制システムだと考えられている。

 しかし、その一方で老化細胞が体内に居座り続け、それが蓄積していくと厄介な問題が起こる。蓄積した老化細胞からがん促進作用や炎症作用のある物質がまき散らされ、慢性的な組織損傷を引き起こし、がん、肝臓や肺の線維化、動脈硬化、糖尿病などに関係する炎症環境を生み出す。それが結果的に老化やがんにつながる。

 ならば、体内に蓄積した老化細胞を取り除くことができれば、これらの疾患と共に老化を防ぐことができるかもしれない。そう考えるのは当然だ。

 だからといって、全身に散らばっている老化細胞を、メスで切り取ることはできない。そこで考え出されたのが、免疫を使った老化細胞除去法だ。

 免疫とは体内に侵入したウイルスや細菌など、体内の異物を発見し危ないか否か区別し、取り除くシステムのこと。

 免疫には人間には生まれながらに備わった自然免疫(マクロファージや好中球など食べて壊す細胞による攻撃)と獲得免疫(侵入した異物=抗原に対する抗体を作り、次回同じ異物が侵入すると攻撃)の2つがある。先に自然免疫が攻撃し、残った異物を後から獲得免疫が攻撃する。

 獲得免疫には細胞性免疫と液性免疫があり、前者はT細胞と呼ばれる免疫細胞が主体となって働く免疫で、抗体を作るのではなく、免疫細胞自体が異物を攻撃する。

 一方、液性免疫はB細胞が抗体を作ることで異物を攻撃する。

 T細胞は、ヘルパー細胞(異物が危険か否かを判断し、異物情報をB細胞に伝えたり、キラーT細胞に攻撃指令を出すなど免疫の司令塔役)、キラーT細胞(ヘルパーT細胞の指示で異物を攻撃)、制御T細胞(免疫が自己を攻撃しない免疫寛容の働きをする)からできている。

「老化細胞除去で注目されたのが、獲得免疫です。老化細胞の表面に出ている目印だけを攻撃するキラーT細胞に似た細胞を作って体内に注入。増殖させれば、体内の老化細胞を選択的に攻撃し、除去できるのではないか、という発想です」

 実は、この発想による医療技術は既に実用化されている。CAR-T細胞療法と呼ばれるもので、患者の血液から作ったCAR-T細胞と呼ばれる細胞を用いたがん治療法だ。主に白血病治療で成果を上げている。

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