梅酒とレモンサワーで「食中毒」対策ができる? 高知大名誉教授が寄稿
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月29日 9時26分
ワインの食中毒菌に対する殺菌効果については、他の研究グループによって確かめられている。たとえばカンピロバクターを赤ワインの中に入れると、菌の99.9%以上、2倍希釈したワインでも99%以上が1分以内に死滅するという。
梅酒とワインは殺菌作用を有する特別な酒として古くから知られている。その殺菌作用は、これらの酒に含まれるクエン酸などの特別な成分によるという考えが主流だ。これに対し筆者らの実験結果は、「梅酒やワインが特別ではなく、酸味の強い酒類(少なくともpH3.5以下)であれば、どれでも強い殺菌効果がある」ということを示したものとなる。
酸味の強い酒類にはクエン酸などの有機酸が含まれている。有機酸単独でもある程度の殺菌効果があるが、エタノールと混ざると殺菌効果は爆発的に増大するようだ。
では、酸・エタノール混合液には、なぜ強い殺菌作用があるのだろうか? 筆者らの仮説を紹介しよう。エタノール分子が細胞膜に入り込み、膜にわずかな隙間ができ、水素イオンなどが通過しやすくなる。すると酸性の液中に多量に存在する水素イオンが微生物の細胞内に流入し、細胞内pHは急激に下降。タンパク質などの分子が壊れ、微生物は死滅すると考えられる。
残念ながら、強力な酸耐性菌の大腸菌O-157には、酸・エタノール混合液はわずかな殺菌効果しかなかった。理由は、大腸菌O-157の細胞内には、流入してきた水素イオンを効率よく取り除いてしまう強力な反応系が備わっているためである。
最近、70%酸性エタノール(pH3~4)が、ノロウイルスをほぼ完全に不活性化することが報告されている。低濃度の酸性エタノールの場合でもノロウイルスを不活性化させる効果があるかどうかは不明だ。
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