「ホスピタリティー」が回復に欠かせないのはなぜか【正解のリハビリ、最善の介護】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年10月30日 9時26分
ねりま健育会病院の酒向正春院長(本人提供)
【正解のリハビリ、最善の介護】#52
「先生、入院中は毎朝若い看護師さんが手を握りに来てくれるんだよ。そりゃうれしいし、元気になるよ」
いまは回復して復職された83歳の患者さんが笑顔で口にされていました。毎朝、血圧と脈拍、不整脈の有無を確認する看護について話されたほほ笑ましい一言です。
またある時、高名で大きな総合病院の院長先生が看護部長さんと一緒に当院に見学に来られました。その際、院長先生が看護部長さんに、「この病院、なんか居心地いいよね。なんでなんだろうね」と言われました。看護部長さんも、笑顔で「はい。なんか空間が気持ちいいです。明るくてきれいで、スタッフの笑顔と挨拶も気持ちいいです」と答えていました。
私たちの大泉学園複合施設は、回復期リハビリ病院の「ねりま健育会病院」と、超強化型老健である「ライフサポートねりま」の2つの機能があり、2017年に新設しました。開院時からの大きな2本の柱は「人間回復の医療介護」と「ホスピタリティー」です。
人間回復の医療介護についてはこれまでたくさんお話ししてきました。正解のリハビリと最善の介護の実践です。今回はBPSD(認知症の患者さんにみられる精神症状・行動症状)の際に特に試されるホスピタリティーについてお話しします。
ホスピタリティーとは、簡単に言うと、患者さんに対する思いやりであり、心遣いであり、親切な心であり、誠実な心であり、心からのおもてなしです。患者さんを回復させるための「目配り、気配り、思いやり」です。その基本には、常に「公平、公正、誠実、親切な心」が必要です。
つまり、ホスピタリティーとは“関わり方”そのものなのです。そして大切なのは、患者さん、ご家族、私たちがともに喜びを共有して、相互満足の状態をつくることです。著書「患者の心がけ 早く治る人は何が違う?」(光文社新書)にも詳しく記しました。
私たち医療介護従事者の喜びは、リハビリ治療やリハビリ介護により、障害で苦しむ患者さんが回復して社会参加できるようになること、また、問題行動を起こす患者さんが改善されて、穏やかにご家族と生活を送れるようになることです。患者さんやご家族から改善を感謝されると、とてもうれしく感じ、やりがいが湧き、胸を張れます。
しかし、その治療や寄り添いの実践の過程は、体力的にも精神的にも大変な苦労を伴います。特に、認知症や高次脳機能障害によるBPSDが強いケースは大変です。大声、暴言、介護時の暴力は非常に困りますし、他の患者さんにも迷惑をかけ、職員がケガをすることもあります。
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