楳図かずおさんが死の2年半前に訴えていた思い…今の漫画界を「商業主義」と苦言も
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月5日 18時3分
楳図かずおさん(2022年3月撮影)/(C)日刊ゲンダイ
また1人、漫画界の巨匠が旅立ってしまった。『漂流教室』『まことちゃん』などで独自の世界観を展開した楳図かずおさんが、10月28日に亡くなった。88歳だった。恐怖、ギャグ、SFとさまざまなジャンルで革命的な作品を残したレジェンドに日刊ゲンダイがインタビューしたのは2022年3月のこと。当時は『楳図かずお大美術展』で101枚の連作絵画を発表。漫画という表現手法さえも超越した新たな挑戦を続けていた頃だ。楳図さんが打ち明けた「漫画界への遺言」とは――当時のインタビューを再掲する。
◇ ◇ ◇
「グワシッ!!」──。おなじみの赤白ボーダー柄の服に身を包み、巨匠は現れた。27年の沈黙を破り発表した新作が話題を呼び、開催中の展覧会も大好評。優しい口調で熱っぽく話す姿はエネルギーに満ちあふれ、85歳という年齢を感じさせない。恐怖漫画の第一人者にして、数々の話題作を世に問うてきた漫画界のレジェンドが、新たな作品に込めた思いを語る。
──なぜ、1995年に長編「14歳」を完結させて以降、漫画の創作から遠ざかったのですか。
「14歳」の最後の頃は自分の描いている絵が上手なのか下手なのか、分からなくなるほど、くたびれちゃって。素直に「もうやめる時期が来た」と思い、やめたんです。その後も後悔とか、また描きたいという気持ちは全くなかったんです。
──再びペンを執ったのは2018年、「漫画界のカンヌ」とも呼ばれる仏アングレーム国際漫画祭で、代表作「わたしは真悟」が受賞したことがきっかけとか。
「遺産賞」というのが素晴らしい。評価が言葉に表れていますから。
──「永久に残すべき作品」という賞です。
うれしくて「じゃあ、新作を描くわ」となりました。でも漫画のスタイルは出尽くしているし、何か新しいことをやらないと、つまらない。誰もやっていないことをやるのが僕のモットーですからね。漫画から原点に返って絵画とも思ったけど、一点物を並べるだけではドキドキしない。そこで絵画に漫画のストーリー性を取り入れ、新しい表現を目指したのです。
──それが101枚の連作絵画なのですね。
展覧会を開くのに、100枚くらいの作品はいるだろうなと思って。100はありきたりの数字だけど、101なら一歩ハミ出るというか。101枚というのは内容よりも先に決めました。
──作品を拝見すると、下書きの緻密さや彩色の鮮やかさにゾクゾクします。
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