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楳図かずおさんが死の2年半前に訴えていた思い…今の漫画界を「商業主義」と苦言も

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月5日 18時3分

 ありがとうございますッ!

 ──どのくらいのペースで描かれましたか。

 ノソノソせず、1日2~3時間。体力がないし、作業を早く済ませたいので。結局、完成には4年ほどかかりました。コロナ禍で展覧会が1年延期され、何とか間に合いました。

 ──額縁もすてきです。

 うれしい~。僕の好きな赤と緑を使いました。額縁も重要な作品の一部です。

 ──漫画と絵画との違いは感じましたか。

 漫画がコマの連続体の「つなぎの芸術」なら、絵画は単体の芸術で1枚ずつがクライマックスになる。ただ、画面1つに1つのクライマックスだと物足りない。例えば過去と未来を同時に描くには2つ、3つのクライマックスが必要です。

■人間は退化している

 ──先生の作品には未来を予見するような世界観があります。新作は人類滅亡後の未来を描いていますが、その展覧会の会期中に核使用をほのめかす戦争が起きてしまいました。

 ショックですよねえ。新作には「終りのはじまり」という作品もあります。そうならなきゃ、いいのですけど……。

 ──「退化」という作品も印象的です。

 物騒な出来事を見聞きするうち、「人間は退化している」の一言で説明できるのではないか。そう考えるようになりました。人間は常に進化するものだと皆、思っているけど、今は退化の途中じゃないかと。

 ──進化には成長と競争がつきまといます。

 そこにムリがあり、行き詰まった先は退化するしかない。人間全体を是正しようとする考えなら、あえて退化する必要性があるのではないか。原点に戻った方が順応力は高いし、どうにでも応用が利く。そして「こっちがいい」という方向性を見つければ、そこに向かって再び進化を始めればいいと思います。

 ──いったん、引いてみるのも大事だと。

 上がりっぱなしなんて絶対にあり得ない。何事も波のようなもので、上がった次は下がる、下がった次は上がるの繰り返しなわけですから。だけど、放っておいたら、ずっと退化しっぱなしで、人類が消えてしまう怖さはありますね。

今の漫画は「アニメの台本」

 ──以前「少年漫画、少女漫画をずっと大事にしてきた漫画家は僕だけ」と語っていました。新作もある意味、少年と少女が主人公のお話です。

 子供が主役だと、物語の振り幅が違う。大人だけの物語よりも自由です。例えば大人が主役だと「東京タワーのテッペンまで登ろう」なんて発想は絶対に出てこない。常識に縛られてバカげたところに物語が進まず、つまらなくなる。「子供ならでは」が僕の作品の基本。もともと、自身の漫画に対し、最初に決めたのは戦争、貧困、病気、あと恋愛は描かないこと。それをやったら芸術ではないような気がしたので。で、残ったのが「怖い」でした。

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