拒食症で体重23キロに…料理研究家Mizukiさん「死ぬんだと思いました」
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月11日 9時26分
料理はずっと好きだったのです。体重を減らすという食へのこだわりが強かっただけに、食材のカロリーは完全に把握していました。ギリギリ立てる体で、自分は食べないのに家族の食事はコントロールしたいと思っていました。でも、タマネギを切ろうとしても切れなくて、「こんなこともできなくなったんだ」と涙が出たのを覚えています。それが24歳ごろでした。
家族への申し訳ない気持ちが募る中、家から3~4時間かかる市内の病院の心療内科へ週1回通うことになりました。そこで出会った先生が自分にとってはしっくりきたんです。そして「次回までに少しでも太っていれば入院しなくていい」という約束をしました。
でも、太れないまま通院日を迎えました。すると、母が私のポケットに小銭の入った小さな袋を入れたのです。少しでも重さを増やそうとしてくれて……。私はなんとも言えない気持ちになりました。病院へ行って体重を量ると目標の30キロを超えていて、先生がすごく褒めてくれました。けれど、いたたまれなくなって入院覚悟で白状したんです。そのとき先生は「いいよ」と言って、家に帰してくれました。
そんなことがあってからのある日、ひとりで家の和室にいたら、障子から光が降り注いで、私を抱きしめてくれたような気がしたんです。自分で自分を抱きしめながら、「もういいよ」「もういいから」と声に出していました。すると何か勇気が出て、「何か食べに行こう」と母を外へ誘うことができたのです。
ガリガリの体で近所のカフェを訪ね、シフォンケーキを1つ頼んで母と2人で半分ずつ。それを毎日、続けました。その後、夕食も外で母と半分ずつ毎日、食べました。栄養が入ると頭がクリアになって、やっと「病気の自分は間違っている」と認識できたのです。強い薬を使って、太ることへの恐怖を抑えられたのもいい方向に作用しました。
その後も簡単ではありませんでしたが、「料理」が自分と社会をつなげてくれました。「ひとつ抜けたな」と思えたのはほんの2年前。レシピ本大賞で2位になったときでした。「悔しいけれど、こんなにうれしい2番はありません」と、負けを認める言葉が言えたのです。それが、病気から遠ざかる“何か”だったと感じています。
この仕事を始めてから拒食症の人や家族から何百件も相談を受けてきました。この病気の人にとって、病気を治そうとする人は敵です。必要なことは「このままでいいよ。どんなふうになっても私はあなたが大好きだよ」と言って、安心させてあげることだと思います。
(聞き手=松永詠美子)
▽Mizuki(みずき)1986年、和歌山県出身。カフェ経営を経て、料理レシピをブログに投稿すると料理レシピランキングで1位になり、2014年にはレシピ本を出版。簡単・時短・節約をコンセプトにしたレシピを紹介し、瞬く間に人気料理研究家となる。22年、第9回料理レシピ本大賞準大賞を受賞。24年10月現在、インスタグラム(@mizuki_31cafe)では130万人以上のフォロワーを持つ。
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