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稀代の大実業家・稲盛和夫氏はなぜ子供たちに「利他」の重要性を伝えたのか?

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月15日 9時26分

 雑草の生い茂る心のままに人生を生きていったのでは、その人の人柄もひねくれた意地悪な性格の人間になっていきます。同時に、そういう悪い人間性を持った人の周囲には、その人間性に合ったように、波瀾万丈で困難なことが次々と起こってくるようになります。

 一方、きれいな美しい心で生きていく人は、すばらしい人間性、人柄、人格になると同時に、その人の周囲にも、その人間性、人柄、人格に合ったような、すばらしい出来事が起こってきます。仕事も順調にいき、会社も繁栄し、豊かで平和な家庭が築けるといったように、すばらしい環境が周囲にできてくるわけです。

 心に抱く「思い」というものは、それほど偉大な力を持っているのです。

一人ひとりが心の庭を整えていく

 みなさんは今、将来に向けて学校や塾で一生懸命に勉強していらっしゃると思います。もちろん、それもとても大切なことですが、さらに大事なのは、今お話しした心の手入れ、心の整理なのです。

 私は、「自分だけよければいい」という利己的でよこしまな心をなるべく抑え、思いやりにあふれた美しい利他の心が、自分の心の大部分を占めるように心の庭を手入れしていくようにしなければならないと言いました。

 実は、この自分の心をきれいにするということは、宗教家の方々が修行や荒行を通じて行っておられます。厳しい修行を通じて自分を鍛え、心を整えるようにしておられます。ですから、ともすると、心を美しくきれいなものにしていくということは、一般の我々が行うことではなく、宗教家の仕事のように思われがちですが、決してそうではありません。

 今、こうして生きている誰もが、自らの心を美しいものにしていくことが、その人の人生にとってたいへん大事なことだということに気づき、「思い」が発するベースである心をきれいにすることに努めなければなりません。

(2014年10月4日 鹿児島市立玉龍中学校・高等学校での講演より)

▽稲盛和夫(いなもり・かずお)
1932年、鹿児島市に生まれる。1955年、鹿児島大学工学部を卒業後、京都の碍子メーカーである松風工業株式会社に就職。1959年4月、知人より出資を得て、資本金300万円で京都セラミック株式会社(現京セラ株式会社)を設立。代表取締役社長、代表取締役会長を経て、1997年から取締役名誉会長(2005年からは名誉会長)。また1984年、電気通信事業の自由化に即応して、第二電電企画株式会社を設立、代表取締役会長に就任。2000年10月、DDI(第二電電)、KDD、IDO の合併により株式会社ディーディーアイ(現KDDI 株式会社)を設立し、取締役名誉会長に就任。2001年6月より最高顧問となる。2010年2月には、政府の要請を受け株式会社日本航空(JAL、現日本航空株式会社)会長に就任。代表取締役会長を経て、2012年2月より取締役名誉会長(2013年からは名誉会長)、2015年4月に名誉顧問となる。一方、ボランティアで、全104塾(国内56塾、海外48塾)、1万4938人の経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として、経営者の育成に心血を注いだ(1983年から2019年末まで)。また、1984年には私財を投じ公益財団法人稲盛財団を設立し、理事長(2019年6月からは「創立者」)に就任。同時に、人類社会の進歩発展に功績のあった人々を顕彰する国際賞「京都賞」を創設した。2022年8月、90歳でその生涯を閉じる。

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